ジャッカルの日

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『新』と『牌』ーゲッターロボ二題

 『新ゲッターロボ』全話視聴。最終回を観ていると自然と涙が溢れてしまった。泣かせようとしてる場面は一切無いのに。

新ゲッターロボ

新ゲッターロボ

  • メディア: Prime Video
 

 いわゆるゲッターロボサーガとは独立した世界観だが、ストーリー展開も含めて石川賢リスペクトの気概に溢れている。漫画版『ゲッターロボ』に寄せたガサついた画風も特徴で、デジタル特有の妙にヌルっとした動きが時おり気になるものの、制作陣の熱意はなかなかに感じられる。ムサシとベンケイが「武蔵坊弁慶」という1人のキャラにまとめられたのも英断。『真ゲッターロボ 世界最後の日』のインパクトから抜け切れていない感はあるのだが(『世界最後の日』以降でその影響を受けていないゲッター、漫画アニメ問わず皆無じゃない?)、竜馬・隼人・弁慶のみならず早乙女研究所の面々もほぼすべて超好戦的&悪人フェイスのバーサーカーぞろいという突き抜けっぷりはなかなかの個性だと思う。

 

 
 最終回、別に感動するような展開があるわけではない。ネタバレしてしまうと、ラストは「無限に続く戦いの次元へ…」といういつものアレなのだが、最終回13話冒頭、圧倒的なパワーを持って四天王(つい3話前にポッと出てきた最後の敵)を叩き潰すゲッター1の無双ぶりを見ているとなんだか泣けてきてしょうがなかった。
 「圧倒的な暴力」というのはおれの泣きのポイントの1つで、例えばゴジラが例のテーマと共に現れて暴虐の限りを尽くすシーン…比較的最近だと『シン・ゴジラ』の第三形態後とか、『GODZILLA ゴジラ』(2014)のハワイ上陸時とかを観ていると、自然と涙が溢れてくるのである。それはもう滂沱の如く。感情的には何かというと「畏敬
」がいちばん近いかもしれない。デカいものが暴れているとそれだけで感動してしまう。ふだん信仰心のカケラも持ち合わせていないぶん、神的存在への渇望が深層意識にあるのかもしれない。

 おれは別に『ゲッターロボ』全作品を履修しているわけではなく(そもそもテレビ版『ゲッターロボ』『ゲッターロボG』は未視聴)、コミック版も號だのアークだの飛焔だのDEVOLUTIONだのの抜けがたくさんあるのでニワカもいいところなのだが、それでも『ゲッターロボ』は自分の中で特別な作品だ。ロボットものに必要なのは正義の心がどうとかではなく、圧倒的な暴力でもって敵を絶対にブッ殺すという強い意志であるというムチャクチャなエゴがすべてのシリーズに貫かれているからだ。石川賢という稀有の才能によるオリジナルを超えるべく、多くのクリエイターが奮闘している様がどのシリーズ作品からも感じ取れる。なんかこの辺のことを「作品自体もゲッター線と共に進化している、それこそがゲッターである!」みたいに中身皆無だけどうまいことを言ったふうの締め方をすればこの稿もまとまるのだが、しないのである。

 

 

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 とりあえず何か読もうかと、電子書籍になる気配のない『ゲッターロボ牌』(脚本・森橋ビンゴ、作画・ドリル汁)を買いまんた。海底人類アトランティスがオリハルコンで精製された巨大兵器・ハイビーストに搭乗し地上へ侵攻。ハイビーストを砕くには乗り手の精神的な動揺を誘うしかない。そしてアトランティスは麻雀が好きだった! というわけで、麻雀で戦うゲッターロボが誕生したのである。

 

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信頼できる絵柄

 

 パイロットが全員美少女で相当にフェチ全開と言うのは『偽書ゲッターロボダークネス』をも凌ぐ好き放題っぷり。ゲッタービームと称して巨大な牌で敵をブン殴るデタラメさは気持ちよく、ラストのもはやお約束とも化した超展開などは「少しも理解できないけどなんだかスゴいものを読んだ」という満足感を与えてくれる。
 難点はぜんぜん麻雀してないことだろうか。どんな手を狙っていてどんな駆け引きが行われているのかさっぱりわからず、「麻雀的な要素をちょこっと入れたロボットモノ」になってしまっている。本作のパワフルさもシリアスさも、バトルをもう少し麻雀寄りにしたとて薄れたりはしなかったと思うのだが。ただ逆に言えば麻雀をぜんぜん知らなくても問題なくノリで読めるので、そこはプラス点でもあります。

 

スパロボにも出たし乳も揺れた