ジャッカルの日

漫画・ゲーム・映画・怪奇についてバカが感想と考察を書く

明らかに許可取ってない有名人パロディ漫画10選

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※初出「二級河川19 ファミコン無頼」 金腐川宴游会 - BOOTH

 

 「モンゴルの英雄たるチンギス・ハンを侮辱している!」として、 2018年3月号のコロコロコミックが回収騒ぎになった事件を覚えておいでだろうか。この問題に対しての小学館の対応はだいぶ腹立たしかったがそれは置いとくとして、「昔はもっとヤバい漫画いっぱいあったよなあ」などと思い出した人も多かったのではないか。

 そういうわけで、クソガキ御用達のブラウン管無法地帯「有名人パロディ漫画」の中から思い出深いもの、面白かったもの、チンギス騒ぎ以降に買い集めたもの、単純にヤバいものをいくつか紹介しよう。基本的に「タイアップ関連ではない」「当時存命の有名人を扱っている」「少年・少女漫画」から選んでおります。青年漫画を含むと野球・政治 4 コマとかもフォローする必要が出てきてキリがないので…。

 

【もくじ】

 

やっぱ!アホーガンよ

■著者:柴山みのる ■全6巻 ■講談社 
■コミックボンボン1984年5月号~1989年10月号

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 初期こそアホーガンやヌタン・ハンセン、九州力といったキャラたちがプロレスパロディを繰り広げていたが、そのうち下品さが急加速。ウンコとチンチンとオッパイが毎回の如く登場し、男子小学生は大歓喜、真面目なプロレスファンは渋い顔の過激漫画と化す。本作はチンチンの描写に置いては一線を画しており、触手の如く自由自在に動くのはもちろん、大量の水や空気を吸い込んだり、物を食べたり、うんばらほ(チンチンで天を指さすギャグ)したりとなんでもアリ。“男の人格はチンチンに宿る”と言わんばかりの活躍ぶり。
 現在ではプレミアが付いており入手難だが、圧倒的なテンポのよさは今読んでも色あせておらず、今回紹介する漫画の中でも群を抜いて面白い。最終回でもそのテンションは下がることなく、バカボンのパパやSDガンダム、温泉ガッパドンバなどのボンボン連載キャラが集合し「ボンボンもこれで上品になる」と喜んでいるところへ(ドンバは人のこと言えないだろ)アホーガンが乱入。「お前らも道連れじゃ!」と“最終回”と書かれた穴へに引きずり込み、ラストは全員で「うんばらほ~」して終わり。いろんな意味で伝説の作品。

おもしろ度  ★★★★★
ソックリ度  ★★
シモネタ度  ★★★★★
総合危険度  ★★★★★

 

 

わ~お!ケンちゃん

■著者:竹村よしひこ ■全6巻 ■小学館
■コロコロコミック1991年3月号~1994年11月号

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 アホ小学生の“志村ケン太”ことケンちゃんが、クラスメイトの加藤茶太郎、うっちゃんなんちゃん、タンネルズ、松ちゃん浜ちゃん、ライバルのタゲシ軍団といったメンツといっしょにイタズラやウンコやオナラをする話。担任の先生として“おこりや長介”、屁をこくデブの役で”高木ぶー”が出演している(工事は?)。この手の漫画のお約束として登場人物はみな元ネタをもじった名前(明石家イワシ、ヂャーリー浜など)だが、コロッケとウインクはそのまま。一般名詞だから? お笑い界隈だけでなく、当時のテレビの人気者が怒涛の如く出演しており、ネタの詰め込み方もすごい。 30代なら懐かしさで感涙必至、 20代以下は困惑必至。
 本作終了後にすぐ、とんねるずっぽい人たちが主役の『すくーぷ?! ワイド笑学園』が同作者・同誌で連載開始するが、こちらは単行本未発売。まったく記憶に無いな…。

おもしろ度  ★★★
ソックリ度  ★★★
シモネタ度  ★★★★
総合危険度  ★★

 

あほ拳ジャッキー

■著者:ぜんきよし ■全7巻 ■小学館
■コロコロコミック1983年8月号~1987年3月号

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 あほになればなるほど強くなる「あほ拳」の使い手・ジャッキーが、修行のためになんかいろいろする(ウンコとか)。ジャッキーと師匠のフェイフェイ(『酔拳』の師匠そのまんま)、ライバルのブルース・ソーの3人がメインキャラだが、カンフー映画の人気者をそれしか思いつかなかったのか、わりと最後までずーっとこの3人がメインのまま続く。初期こそ学校が舞台だったりしたものの、終盤は「西部の用心棒編」「アホゾンの地底人編」などパロディ番外編が延々繰り返されていた。キャラの体型はどことなく『Dr. スランプ』チックで、同じく鳥山明フォロワーの『超人キンタマン』との合作『あほ拳キンタマン』も存在している。
 今回紹介した中では地味に入手難度が高い。作者のぜんきよしは「小学五年生」誌で『やっぱり?! クワタくん』という、どこかで聞いたようなタイトルのプロ野球パロディ漫画も連載している。このクワタは顔のホクロを自由に動かすことができ、内心で考えていることが度々ホクロ文字になって浮かび上がってしまう…というギャグだけは面白かった。

おもしろ度  ★★
ソックリ度  ★
シモネタ度  ★★★★
総合危険度  ★★★

 

ガバチョン笑劇場

■著者:二宮博彦 ■単行本未発売 ■講談社
■コミックボンボン1987年7月号~1988年6月号

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 明石家タンマ(関西弁の出っ歯)と片岡ズル太郎(まだヨガに傾倒していない頃)、秘書のユキ(苗字不明。お色気枠)の3馬鹿トリオ・ガバチョン商事の面々が、金儲けのために東奔西走。下品で時おりエッチな騒動を巻き起こす。
 「テレビの人気者大集合!」とかいうアオリ通り、ライバル会社の珍村ケーンとカット茶をはじめ確かに有名人に似た連中はよく出てくる。ただホントに顔が似ているだけで、テレビでおなじみのネタをやってくれたりはしないのが少々寂しい。脳に斧が刺さった珍村ケーンがクルクルパーになったり、人気アイドルグループ・光GENKIがブサイクになったり、脈絡なくオッパイが出てきたりと内容自体はわりと攻めてるのだが、単行本未発売のためか知名度は低い。最終回は人食い土人の島に行く話であり、今後も復刻の可能性は低そう。
 作者の二宮博彦はあまり単行本に恵まれない人だが、プレイコミック(秋田書店)で長期連載するなど近年でも活躍中。作者のサイト「彦ぷんの24時間営業中」の著作紹介ページに『ガバチョン笑劇場』の文字は無かったが…。

おもしろ度  ★★★
ソックリ度  ★★
シモネタ度  ★★★★
総合危険度  ★★

 

ぶっとび!リエちゃん

■著者:じょうさゆり ■既刊1巻 ■小学館
■小学四年生ほか 1993年?

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 さっきからウンチやチンチンの話ばかりで、有名人パロディ漫画は男子小学生向けのものしかないのかと思われそうだが、ちゃんと女の子向けの作品も存在します。『ぶっとび!リエちゃん』は4コマがメインで、連載当時は本当に大人気だった宮沢りえ(っぽい人)を筆頭に、タレント・アイドル・歌手・俳優・スポーツ選手・お笑い芸人・直木賞作家・老齢の双子姉妹と、登場する顔ぶれのバラエティ豊かさはぶっちぎり。じょうさゆりの似顔絵は普通に可愛らしいが、ネタ方面は貴花田との破局やヌード写真集、りえママの怪物っぷりをいじっていたりと容赦ない。「芸能界おさわがせ4コマ」の名は伊達じゃない。
 貴花田スキャンダル以降の宮沢りえがネタにしづらくなってしまったのも影響したのか、本作の2巻以降は出ていない。じょうさゆりは『芸能ワンダーランド アイドル1番』を引き続き小学館の学習雑誌で連載しており、こちらは全3巻まで続いている。1巻だけで軽く100人以上の有名人パロキャラが登場している大盤振る舞いっぷりはさすがの一言。懐かしく読ませてもらいました。

おもしろ度  ★★★
ソックリ度  ★★★★
シモネタ度  ★
総合危険度  ★

 

かっとばせ!キヨハラくん

■著者:河合じゅんじ ■全15巻 ■小学館
■コロコロコミック1987年6月号~1994年4月号

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 プロ野球パロディ漫画としてはトップクラスの知名度ではなかろうか。野球を知らない人にもクワタ(がめつくて卑劣)ノムさん(しつこくて卑劣)のキャラクターを広めた功績は大きい。『やったぜ!クワタくん』『ゴーゴー!ゴジラッ!!マツイくん』など続編もいろいろあるが、基本クワタが最終的に痛い目に会うオチが多い印象。マツイ登場後はノムさんもロクな目に会わない。
 マツイ移籍後に連載開始した『モリモリッ!ばんちょー!!キヨハラくん』(2003年)では、キヨハラの顔がかなり違っている。まあデビュー当時とずいぶん雰囲気変わってたしね(よく見るとタラコ唇になりギザ歯になっただけなのだが)。あまりに人相が悪かったせいか、「コロコロアニキ」で復活したキヨハラくんは『かっとばせ!』時代の顔に戻っていた。その後キヨがやらかしたせいでいろいろあったのだが、長くなるしおれは全巻持ってないので誰か『キヨハラくん』『クワタくん』『マツイくん』徹底研究みたいな記事書いてください。読みたい。

おもしろ度  ★★★★
ソックリ度  ★★★★
シモネタ度  ★
総合危険度  ★

 

やったね!ラモズくん

■著者:樫本学ヴ ■全6巻 ■小学館
■コロコロコミック1993年8月号~1998年2月号

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 JリーグならぬSJ(スーパージョーダン)リーグのラモズくんが、アルチンド、かず、キタサワといった面々とともにダジャレを言ったりハゲをいじったりする4コマ。単行本は1ページに4コマが1本掲載されており、縦長サイズの変形版。
 さすがベテランの樫本学ヴ、今回紹介したマンガの中でも抜群に絵がうまい。選手たちのデフォルメ具合も完璧だし、たまに出てくる女の子も可愛い。ネタはサッカーとは特に関係ないものが多いが、樫本学ヴはコロコロで『嵐のJボーイ ぶっとび闘人』という真面目なサッカー漫画を本作と同時連載しており、サッカーを知らないはずはない。キャラネタだけで回せるくらい、当時のJリーガーは濃いメンツが揃っていたということでもある。マツイくんばりの野人と化しているアルチンド(台詞が「ウガー」とかばっかり)や、ハゲネタをさんざんいじられるスキカラ(鋤柄昌宏。選手としてはわりと地味)は連載後期まで登場していた。ちなみにラモズは特に必然性なく同性愛者として描かれている。

おもしろ度  ★★★★
ソックリ度  ★★★★★
シモネタ度  ★★★
総合危険度  ★★

 

小泉家のおやじ

■著者:藤波俊彦 ■既刊1巻 ■小学館
■小学四年生ほか 2002年~?

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 日本の首相・小泉ジュンイチローと、父親が総理大臣であることを知らない小学生の息子・コータロー。なんとか息子に尊敬されたいジュンイチローは、氷川キヨシ風にイメチェンしたり、写真集を出したりとあさっての方向へ努力を繰り返すが、コータローの目からは「わけのわからない奇行に走るおやじ」としか見られないのであった。
 政治家キャラとして、嫌われ者のムネオ(デカい黒人秘書・むるあかの肩に乗って移動している)、ナンパのことしか考えていないぶっしゅ、ムネオと仲の悪いマキコ、ボケが入っている塩じーなどが出てくる。そのうち「自民党」と大書された“改革ロボ”や地球を侵略に来た“ツッパリハイスクールロケンロール星人”、“どくどくゾンビ”などよくわからないキャラが登場。政治風刺とは数万キロ遠い場所で大騒ぎが繰り広げられます。ギャグの脱力ぶりも含め、小泉を救国の英雄としてやりたい放題やらせた麻雀漫画『ムダヅモ無き改革』(大和田秀樹)とは逆ベクトルの作品。作者はこれと同じノリでアベちゃんやポッポやトランプの半生も描き、暇な方々に叩かれたりしていた。

おもしろ度  ★★★
ソックリ度  ★★★★
シモネタ度  ★
総合危険度  ★★★★

 

よ!大統領 トラップくん

■著者:コーヘー ■単行本未発売 ■小学館
■コロコロコミック2017年4月号~2017年12月号

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 画になる…というかネタ的な要素では小泉にも負けず劣らずのトランプ大統領も、もちろん漫画になっております。小泉以上に「どれだけイジってもいい」位置にいると思われるキャラクターだし。本作は小学4年生で大金持ち、態度がクソでかいトラップ君(とても小学生には見えない)が主人公。いろいろ好き勝手したあげくヒドい目にあって顔芸でシメ、というのがだいたいの流れ。トラップだけにラップ要素を交えているのがミソといえばミソで、「小学生はダジャレが好きだからラップも好きだろう」くらいの雑なマーケティングを感じられて最高です。ちなみにアニメにもなっており「フリースタイルダンジョン」でもおなじみのラッパー、UZI(ウヂ)がトラップ君のラップを披露している。コロコロ漫画らしくアニメでもトラップくんはラップに乗せて肛門やチンチンを晒したり屁をこいたりしているのだが、これをYoutubeのコロコロ公式チャンネルで全世界に公開していたのはだいぶ度胸ある。

おもしろ度  ★★★
ソックリ度  ★★★★
シモネタ度  ★★★
総合危険度  ★★★★

 

仮面のりどん

■著者:沢田ユキオ ■単行本未発売 
■掲載誌不明(情報募集中)

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 フジのバラエティ『とんねるずのみなさんのおかげです』の1コーナー、「仮面ノリダー」が基。ハナの穴が大きい変身ヒーロー・仮面のりどんが、ジョッカーならぬチョッカーの皆さんとドタバタバトルを繰り広げる。コント仕立てだった「ノリダー」と、『スーパーマリオくん』でおなじみ・沢田ユキオとの相性は抜群。ギャグ7割、バトル3割のわりかし元ネタに忠実に再現した内容になっていた。敵怪人は「タコ男」など当然オリジナルで、のりどん強化形態の「すーパーのりどん」なども出ていた。(今回は現物を入手できなかったので、当時読んだおれのおぼろげな記憶による記述)
 Wikipediaには「1989年ごろのテレビランド(徳間書店)に連載」という記述もあったが、当時のテレビランド誌を読み返しても確認できなかった。冷静に考えれば東映お膝元の雑誌で堂々と「ノリダー」パロを連載するわけはないよな~という気もする。沢田ユキオがテレビランドの巻末で連載していた「どんちゃんランド」の1989年6月号で、仮面ノリダーのパロディ「仮面ノリドン」をやっていたのと混同されているのかもしれない。この回は“つゆ男”なる怪人が最終的に“ケーキ男”に変身し、「ハッピーバースデーつーゆー」と歌うカオス展開。

おもしろ度  ★★★★
ソックリ度  ★★★★
シモネタ度  ★
総合危険度  ★★

 

まとめ

 特にありません。

 

 

有名人パロ漫画落穂拾い

●『ごっちゃん!若貴ブラザーズ』(柴山みのる/既刊1巻/デラックスボンボン) 

 『アホーガン』の柴山みのる先生、次なる標的は角界だった! アホで下品なお兄ちゃんの“若穴田”と、お兄ちゃんより人気者でわりとアホの“貴穴田”がチンコを振り回したりウンコをしたりします。『アホーガン』とやることがほとんど変わってなかったためか、本当にどっかから怒られたためかどうかは知らないが、単行本は未完結。最終回は「超能力を持った赤ん坊の殺し屋に狙われ、胴体を真っ二つにされるものの普通に身体が生えてきて再生したのでめでたし」というデタラメな内容なので特に読まなくていいです。

diary.midnightmeattrain.com


 

●『バビブベボブボブ!さっぷくん』(重岡秀満/全3巻/コロコロコミック)

 小学生の“さっぷくん”がクラスで大暴れするお話(物理的な暴力で)。あけぼのを始め有名人は多数出演しているのだが、ボブ・サップ公認のタイアップ漫画なので今回のセレクトからは外れた(曙の許可は取ってないと思うが)。

 

●『がぎぐげゴジラくん』(御童カズヒコ/単行本未発売/デラックスボンボン)

 ゴジラ松井は誰が描いても同じ顔になるんだな、ということがよくわかるプロ野球パロディ。読者による「プロ野球選手似顔絵コーナー」が毎回設けられていた。

 

●『ど~んとドラゴン・キッドくん』(松下幸志/全4巻/コミックボンボン)

 兵庫のプロレス団体、闘龍門JAPANとのタイアップ漫画。プロレス小学校「闘龍門」に転校してきた小学生、ドラゴン・キッドくんが主人公のギャグバトル漫画なのだが、チンチンをロープ代わりにしたりリング上でウンコを漏らしたりと『アホーガン』ばりのお下劣殺法が頻出。闘龍門の懐の広さがすごい。

 

●『サウエとラップ ~自由形~』(陸井栄史/既刊1巻/週刊少年チャンピオン)

 サイプレス上野監修の青春ラップ漫画。さえない高校生の佐上(サウエ)と魯良(ロヨシ)が、他校の番長や校長先生相手にラップバトルを繰り広げる。中盤以降は「パン工場のバイトで目の前を流れていくパン」や「同級生でオナニーしようとしたときに目の前に現れた己の男性器を概念化した何か」など、よくわからないものと戦っていた。漫画内のQRコードを読み込むと、作中のラップバトルを有名ラッパーが再現した動画を見られるという無茶苦茶に手間がかかったタイアップをやっている。単行本未完結はもったいなさ過ぎ!

 

 

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 以上です。