ジャッカルの日

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【ウルバト】★1・★2全怪獣レビュー  『ウルトラ怪獣バトルブリーダーズ』

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 の★1、★2怪獣についてのレビュー。おもに限定マーケットで手に入る★3怪獣と比べると、入手が容易なぶん固有スキル・必殺技の性能などでやや地味な印象を受けるが、仲間の怪獣、継承スキル次第で遜色ない活躍をさせることが可能。特定の属性や相性・攻撃タイプが必要となる探査クエストでは、彼ら低レア怪獣の手を借りなければ苦戦する箇所も多いだろう。
 ★1怪獣はショップで買えるDNAの値段が圧倒的に安く、比較的ラクに★6まで進化させることができる。その一方で固有スキルとパラメータの配分が噛み合っていないことも多いため、アリーナや高難度クエストで使うには継承スキルによる大幅なテコ入れが必要になる。★2怪獣は進化の手間・コストは★3とあまり変わらないため少々中途半端な印象もあるが、昨今は覚醒スキルを手に入れた怪獣も多く、活躍の場は少しずつ広がり始めている。※2021/2/16更新

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・「どんなクエストにも連れていける=汎用性高し」という観点から、SABCDEの6段階で評価をしています。汎用性が低いからといって弱いわけではなく、特定の状況ではすさまじい性能を発揮したりします。「襲撃/防衛適正」は、アリーナの襲撃または防衛に向いているかどうかの評価になります。おれも全怪獣を育て切ったわけではないので、フレの怪獣を使った感触とか、あるいはスペックを見て想像で書いてる部分もあるので参考くらいにしといてください。

 

■もくじ

 

【力・★1】

宇宙怪獣 ベムラー /近/怪獣/★/覚醒対応(優先度:D)
・移動力:2 ・攻撃/必殺属性:無/火 ・弱点:氷
・アタッカー ・汎用性:D ・襲撃/防衛適正:D/D

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 チュートリアルで入手でき、必殺技を試し撃ちされる役としてもおなじみのウルトラ怪獣第1号。相手を倒すと攻撃力&必殺技攻撃力が中アップする固有スキルをはじめ、自らの火力を高める手段が豊富。範囲が広めな必殺技も悪くない。その反面、打たれ弱く足も遅いので、性能を存分に発揮させるためには相手に攻撃されないような位置取りやタンク役でのカバーが必要となる(これはどのアタッカーにも言えることだが)。
 の移動力2の近距離型アタッカーはかなり層が厚いため、他の怪獣が手に入っていくにしたがって影が薄くなっていく印象は否めないが、シンプルで初心者にもわかりやすい性能といえる。覚醒すると固有スキル効果で移動力が3にアップするほか、攻撃力・必殺技攻撃力が永続的にアップ、さらに命中率も中アップする。相手を倒せば倒すほど手が付けられなくなる大暴れっぷりはまさに“宇宙の悪魔”の名にふさわしい。ただ打たれ弱いという弱点はまったくカバーできていないため、覚醒前と同じく他の怪獣によるフォローは必須(具体的には身代わり効果を持つタッコングやスキューラ、攻撃集中効果を持つサンダーキラーやピッコロ等)。効果自体は悪くないが使い勝手が大幅に変わるわけではないので、覚醒は趣味の領域。継承スキルは低めの耐久を補うよりは、ベムラー自身の強みである攻撃・命中・必殺を高めてやるほうがいいだろう。

≪育成例≫ 

攻撃力 大アップ ・攻撃力 中アップ(力)or(混成:力技速) ・攻撃力 小アップ(全) ・攻撃・命中 中アップ ・移動力 アップ

 活躍させるためには覚醒と囮タンクによるカバーが必須。アタッカーにしては命中が少々心もとないので補強したいところ。率先して相手にとどめを刺して回るため移動力も上げたい。移動力 アップ(+1)でもじゅうぶん。

 

超人ロボット エースロボット /近/ロボット/★
・移動力:2 ・攻撃/必殺属性:無/闇 ・弱点:雷
・タンク(防御) ・汎用性:D ・襲撃/防衛適正:E/D

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 高いHPと防御力で相手の攻撃を耐えるタンク役。固有スキルは低確率で反撃発動+運 小アップという効果だが、もともとの攻撃力・運が非常に低いので気休め程度の存在(反撃時のダメージは攻撃力が参照される)。反撃は発動さえすれば確実に相手に当たるため、命中の低いエースロボットにはありがたいのだが、ガードを継承できなくなるデメリットが少々痛い(反撃・ガードは継承スキルだけでなく固有スキル・必殺技効果も含め、1ユニットにつきどちらか1つしか所持できない)。

 エースキラーの必殺技連発に耐えただけはあり、防御力 中アップHP 大アップ、さらに必殺技の追加効果(防御力大アップ)も相まって、新たにスキルを継承させなくてもそこそこの耐久力を誇る即戦力。ただ固有スキルの貧弱さもあって、高難度クエストやアリーナ防衛ではたいした時間稼ぎは期待できない。以前は防御力 中アップ目当てなのかマーケットでもそこそこ入札されていたが、特空機1号セブンガーの登場でHP・防御力 中アップの入手が容易になった昨今では継承役としての需要も薄れている。

 

 

硫酸怪獣 ホー /遠/怪獣/★(イベント限定)
・移動力:2 ・攻撃/必殺属性:無/毒 ・弱点:氷
・デバッファー ・汎用性:E ・襲撃/防衛適正:D/D

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 期間限定の降臨クエスト等で入手できる。泣きながら相手に向かっていく攻撃モーションはなかなか可愛い。

 必殺技を受けた時、次のフェイズ終了時まで相手の防御力と運を中ダウンさせる固有スキルを持つ。防御力はともかく、すでに行動を終えた相手の運を下げてもあまり意味はないのだが…(現状、2回行動できる相手が最初に必殺技を使った時か、ヒッポリト星人・スーパーヒッポリト星人の覚醒固有スキルくらいしか影響がない)。「必殺を受けた時」が発動条件の固有スキルは、基本的に回避した時も発動する。強烈な必殺技も回避してしまえばノーダメージなので複数回の発動も狙えるが、ホー自身の回避率は並程度なのであまり期待できない。さらに、必殺技で倒されてしまった時は効果を発動できない。身代わり持ちのタンクにかばってもらえば安全に発動可能だが、戦術の核にするほどの効果ではない。

  ホーの強みの1つは、リーダースキルとしてはオンリーワンの存在である攻撃力 中ダウン(技)の弱化に長けたデバッファーは意外と層が厚いが、ジャミラやエレキング、マガパントンのリーダースキルと比べてもひときわ強力な効果と言える。もう1つの強みは、イベント産ながら必殺技攻撃力 小アップ(全)という汎用的、かつ貴重な継承スキルを持っている点。昨今は必殺技の重要度が高まっているので、継承用に何体か★6まで育てておけば役に立つだろう。

 

超古代怪獣 ゴルザ /近/怪獣/★
・移動力:2 ・攻撃/必殺属性:無/火 ・弱点:水
・タンク(回避) ・汎用性:E ・襲撃/防衛適正:E/D

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 メインクエストAct.3クリアミッション報酬。正統派な見た目からは想像できないが、パラメータ配分はナースと同じで、回避型タンク向き。の中では比較的高めの回避と運を誇るが、メジャーな回避型タンクと比べると数値自体はやや低めなので過信は禁物。
 回避型タンクの多くが固有スキル・必殺技効果で回避率や攻撃面を強化できるのに対し、ゴルザは防御力を強化するスキルが多い。結果、そこそこ回避してそこそこ堅いという、よく言えばバランスタイプ、悪く言えば中途半端な性能になっている。固有スキルの発動条件が「味方が倒されたとき」というのも、率先して攻撃を受けるべきタンクの役割と噛み合っていない。運用にはかなりのセンスが必要とされる。


破壊獣 モンスアーガー /近/怪獣/★
・移動力:2 ・攻撃/必殺属性:無/火 ・弱点:氷
・タンク(防御) ・汎用性:D ・襲撃/防衛適正:E/D

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 メインクエストAct.2クリアミッション報酬。肩書こそ破壊獣だが「遊星の守護者」でありタンク型。固有スキルは攻撃するたびに最大HPが小アップするというもので、他に類を見ないユニークな効果。アップした分のHPは回復するため、疑似的なHP回復スキルとも言える。効果は永続的に続くので、バトルが長引けばかなりタフになる。アリーナではあまり見かけないものの、こいつの場合「先に攻撃の高いヤツから倒せばいいや」と放置しておくとやっかいなことになる可能性もあるので、いちおう意識しておきたい。必殺技は単体攻撃で威力も低いが、次フェイズまで防御 中アップの効果があるので時間稼ぎには役立つ。

 運アップ系のスキルが充実しているものの、元々の運が低すぎる上に攻撃役ではないこいつにとってはほとんど恩恵が無い。★1怪獣には固有能力で伸ばせるパラメータに限って極端に低いケースが多い。

 

超古代怪獣 ファイヤーゴルザ /近/怪獣/★
・移動力:2 ・攻撃/必殺属性:無/火 ・弱点:氷
・アタッカー&バッファー ・汎用性:D ・襲撃/防衛適正:D/E

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 見た目は『ティガ』に登場したゴルザ(強化)そのものなのだが、資料によって同一怪獣だったり別怪獣だったりでわりとややこしい(なので出典は『ウルトラギャラクシー』)。パラメータはすべてが並、リーダースキル・継承スキル・必殺技も特筆するような点は無く、現状ではなんとも言いづらい1匹。せめて超古代怪獣同士で【連携】でも付けてくれれば…(それでも地味だが)。

 固有スキルは2ターンのあいだ、隣接した味方の攻撃力と運を中アップするというそこそこ便利なものなのだが「相手と味方、両方に隣接した状態で行動を終える」という固有スキルの中でも相当クセのある発動条件を持つ。どの位置に、どの順番で味方を置くかがかなり重要になってくるので、使いこなすにはレイオニクスばりの戦術眼が必要かもしれない。

 

ロボット怪獣 メカゴモラ /遠/ロボット/★(ショップ限定)
・移動力:2 ・攻撃/必殺属性:無/闇 ・弱点:水
・アタッカー ・汎用性:B ・襲撃/防衛適正:D/D

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 メインクエストAct.8クリアミッション報酬で、にせウルトラセブンを作ったサロメ星人謹製のメカロボット怪獣。の★1怪獣の中では癖がなく汎用的なアタッカーで、初心者のメインクエスト攻略から高難易度クエストまで幅広く活躍してくれる。メインクエストミッションで入手できる怪獣の中では頭ひとつ抜けた汎用性を誇る。【連携:サロメ】でさらに強化されるが、シナジーのある怪獣は特にいない。あえてやるならメカゴモラ×4でバフを積む脳筋チームくらいか。

 必殺特化の遠距離アタッカーで、常時ガード&必殺技攻撃力小アップの効果を発揮する固有スキルを持つ。継承スキルのガードと比べると発動確率は低いものの(最大25%)、継承スキル枠を取らないことを考えれば贅沢は言えない。必殺技はT字型の射程で複数を巻き込みやすいうえに威力が高く、必殺技攻撃力 大アップ等を継承したうえでリーダースキル必殺技攻撃力 中アップ(力)、固有スキルの効果も含めれば軽く3000を超える超火力になる。探査クエストでもじゅうぶん活躍できるので初心者ブリーダーも末永く使っていけるだろう。

≪育成例≫

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 これくらい必殺技に特化すれば、エキスパートのウルトラヒーローにも相当な痛手を与えられる。攻撃・必殺アップ系を継承すればさらに威力を高めることも可能。耐久を高めたいなら防御力(近) 中アップHP 大アップに替えるのが手軽。

 

 

【力・★2】

透明怪獣 ネロンガ /近/怪獣/★★
・移動力:2 ・攻撃/必殺属性:無/雷 ・弱点:毒
・タンク(回避) ・汎用性:D ・襲撃/防衛適正:D/C

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 固有スキルは、回避に成功するとそのフェイズ中潜伏効果(相手の攻撃対象にならなくなる)を発揮するというもの。ついでに運も中アップする。敵は他の味方を狙うようになるわけで、敵の攻撃をひきつけたいタンクとして考えると一長一短な効果でもある。ネロンガが敵陣に単騎で突入していればうまく撹乱できるが、貴重な移動力 アップを継承させるほどかと言われると難しいところ。ちなみに必殺技の効果が発動すると移動力は+2されるが、必殺技を使用できる段階で移動力が上がっても少々遅い。
 味方を守るタンクとしては扱いが難しいものの、自身のサバイバビリティはそれなりに高い。固有スキルの効果自体はアリーナ防衛にも向いた能力だが、素の回避率がイマイチ高くないため、自身の継承スキルだけでなく味方のバフ・デバフスキルも活用しないとわりと簡単に突破される。せめて回避率があと100高ければ…。

≪育成例≫ 

攻撃力 中ダウン(力) ・命中 小ダウン(全)  ・回避 中アップ(混成:力技速) ・回避 大アップ ・回避 アップ(+140)

 完全にアリーナ防衛仕様。採用するなら全員に回避 小アップ(全)命中 小ダウン(全)を継承させるくらい回避に特化したチームにしたい。攻撃力 中ダウン(力)反撃持ち意識。反撃対抗は移動力が高く攻撃と回避を兼ね備えたアタッカーよりのタンクに回したいところ。


どくろ怪獣 レッドキング /近/怪獣/★★
・移動力:2 ・攻撃/必殺属性:無/地 ・弱点:毒
・アタッカー ・汎用性:D ・襲撃/防衛適正:D/D

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 味方が倒されるとブチ切れて次フェイズまで必殺技攻撃力が大アップ、さらに最大HPが永続的に中アップする。こいつは味方よりも自分が傷つけられた時の方が怒りそうだが(『Z』のような夫婦ならともかく)。最大HPアップは継承スキル反撃とそれなりに噛みあっているが、元の耐久は低いのであまりアテにしてはいけない。この手の味方が倒された時に発動するスキルの持ち主は、ギエロン星獣やジェロニモンなどの倒されても復活するor復活させる怪獣と相性がいい。 
 必殺技は威力こそ高いが攻撃範囲は1マスのみ、追加効果も鈍化(移動力ダウン)を与えるだけと少々地味。岩をブン投げてるだけなのでしょうがないのだが…。とは言え、スキルの効果もあってとんでもない威力を叩き出すこともある。パラメータは必殺がやや高め、HPと攻撃と命中は並、他はすべて低めというなんとも言えない数値。イベント「決戦!Uキラーザウルス」では暗闇耐性も相まってそれなりの活躍を見せたが、現状ではかなり扱いづらい1匹。大人気怪獣なんだしもう少しテコ入れしてくれてもいいのでは…と思っていたら、後にリビルド怪獣としての★3レッドキングが登場した。


カプセル怪獣 ミクラス /遠/怪獣/★★/覚醒対応(優先度:C)
・移動力:2 ・攻撃/必殺属性:地/火 ・弱点:雷
・バッファー ・汎用性:B ・襲撃/防衛適正:C/D

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 かつては限定マーケット専売だったが、現在は一般マーケットで入手可能。『ウルバト』2周年記念の初心者応援ログインボーナスでは★6が配布された。層が薄めなの遠距離型の中でも汎用性は高めで入手しやすく、腐りにくい継承スキルを持っているのが利点で、特に継承スキル回避 小アップ(全)は所持者が少なくなにげに貴重。

 自身のパラメータは控えめだが味方の強化が得意で、いかにもカプセル怪獣らしいサポート役。継承スキルのことも考えると中心のチームがいちばん活躍できるが、固有スキル、必殺技効果(次フェイズ終了まで防御 中アップ)は以外の味方にも有効。ミクラス自身もそこそこアタッカーとしての役割を果たせる。
 固有スキルは待機したときに隣接する味方の移動力をアップ(固有スキルLv.10で+2)、命中率を中アップさせるもの。味方の移動力を上げられるスキルは非常に珍しく、位置取り次第で複数の味方に発動することも可能。タンクを先行させて敵陣に突っ込ませたり、アタッカーの移動力を上げて危険な相手を真っ先に排除したりと、幅広い使い方ができる。

 覚醒すると隣接した味方の攻撃力もアップし、倍率も中から大に上昇。攻撃力アップは汎用性が高く、バッファーとしてはナックル星人ばりの便利屋になれる。さらにバトル開始時にウインダムがいると味方カプセル怪獣の防御が大アップ・HPが小アップ、アギラがいると必殺技攻撃力が大アップ・命中率が小アップする。覚醒したウインダム、ミクラス、アギラ3体をチームに入れた場合、それぞれのHPと命中が1.3倍(小アップ×3)、攻撃力と必殺技攻撃力が1.6倍(大アップ×2)、防御力が1.66倍(大アップ×2)する計算になる。カプセル怪獣たちは素のパラメータが控えめなので超絶パワーアップというほどでもないのだが、バフの数値自体は大きいのでカスタムマトリクスを開放してやれば一級の戦力になるだろう。ただキングオブモンス・バジリス・スキューラの超時空赤い玉チーム、マグマ星人・レッドギラス・ブラックギラスの鈍化チームなどと比べるとお互いの固有スキルにほとんどシナジーが無く、かなり力任せのチームになる。残り一枠は気絶・石化・混乱など搦め手に長けたユニットを入れたいところ。

≪育成例≫ 

攻撃力 小アップ(全)  ・防御力 小ダウン(全) ・回避 小アップ(全)  ・攻撃力 中アップ(力)or(混成:力技速) ・防御力 中アップ(力)or(混成:力技速) 

 手軽に育成したいなら、元からあるスキルを活かしてサポート型にするのがおすすめ。カプセル怪獣チームを使うつもりがなくても、汎用性をより高めるなら混成サポート型を目指したい。回避の高い怪獣が少ないなら回避 小アップ(全) は攻撃 大アップ必殺技 小アップ(全)辺りに変えてもいい。


双頭怪獣 パンドン /近/怪獣/★★
・移動力:2 ・攻撃/必殺属性:無/火 ・弱点:水
・アタッカー ・汎用性:D ・襲撃/防衛適正:D/D

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 固有スキルの効果で2ターンごとにSPが小アップ、攻撃力がフェイズ終了まで中アップする。相手の防御力を大ダウンする必殺技はなかなか強烈で、アタッカーとしては申し分ない。『ウルバト』のセブンは体調万全なようだが、この性能なら守りの硬いセブン相手にもじゅうぶん有効打を与えられる。1000超えの攻撃力も馬鹿にできず、★1★2怪獣の中ではシンプルに使い勝手がいい部類。シンプル過ぎて上位互換となる怪獣が山のように存在するのが難点だが、一応ラスボスなんだしもう一化けしてほしいところ。
 所持継承スキルガードは打たれ弱いアタッカーの生存性を高めてくれるが、アタッカーにワンパン耐えさせたいのなら身代わりまたは攻撃集中持ちタンクと共に運用するのが確実。パンドンに限った話ではないが。

≪育成例≫ 

攻撃力 大アップ ・攻撃力 中アップ(力)or(混成:力技速) ・攻撃力 小アップ(全) ・攻撃・命中 中アップ ・移動力 アップ

 上で挙げたベムラーとほぼ同じ運用となる。移動力2の近距離型はせめて移動力 アップ(+1)を継承させるか、ミクラス、ガヴァドンA、ザンドリアスなどでサポートしないとなかなか使いづらい。


再生怪獣 サラマンドラ /遠/怪獣/★★
・移動力:3 ・攻撃/必殺属性:無/火 ・弱点:氷
・アタッカー ・汎用性:D ・襲撃/防衛適正:D/D

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 原作ではバラバラに四散しても翌日には復活するというわけのわからない不死身さを披露していたが、短期決戦が主流の『ウルバト』ではこの再生能力は脅威にならない。イベント「強化サラマンドラ襲来」では3ターンのあいだ確定復活、復活するたびに必殺ウルトラアップ、かつ復活封印・スキル封印系の能力を一切受けないという能力を持っていた(レジェンド級のインチキ能力に見えるが、実は気絶・混乱への耐性がないため状態異常で固有スキルを封じてしまえば対処は楽)。

 固有スキルは必殺技を受けた時にHPが中回復し、2ターンのあいだ防御力が中アップするというもの。素の防御力はそれほど高くないので、格下以外の相手から必殺技をまともにくらうと再生細胞ごと消し飛んでしまう。必殺技を回避した時にも発動するのだが、素の回避率が低めなのでまず期待できない。スキューラやタッコングに身代わりしてもらえば安全に発動できるが、そもそも身代わりしてもらえる状況ならHP回復や防御アップする必要性が薄い。

 移動力3の遠距離型という機動力の高さが強みだが、攻撃・命中・必殺のすべてが平凡。必殺技の追加効果も火傷付与のみと地味(どう見ても鼻から火炎を吹いているが、これは実は原作に忠実)。イベント産で入手しやすく、強力な固有スキルを持つジェロニモンには全パラメータで負けている。根本的な問題として、サラマンドラ自身の固有スキル・継承スキル・リーダースキルとパラメータ配分がまったく噛み合っていない。『80』ではスカイハイヤーのレーザー攻撃をすべて弾くほどの強固さを誇っていた(だからこそ、喉の弱点を狙うという物語的な必然性があった)のだが、前述の通り防御力は並の怪獣と比べても低め。残念ながら現状では活躍の場面はかなり限られる。


宇宙戦闘獣 超コッヴ /近/怪獣/★★
・移動力:2 ・攻撃/必殺属性:無/火 ・弱点:風
・アタッカー ・汎用性:D ・襲撃/防衛適正:D/E

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 原作では生物兵器然とした凶悪な外見に反し、いろいろと気の毒な境遇だった怪獣。駄々っ子みたいなモーションが意外に愛らしい。

 リーダースキル命中 中アップ(近)は所持者が少ないレアなスキル。もともと命中率に補正が付く近距離型の長所をさらに伸ばすことができ、超コッヴ自体の命中率も高めなので活かしやすい。
 固有スキルは攻撃を受けると発動し、SP獲得率が小アップ&命中率が中アップする。元があまり打たれ強くないので互角以上の相手だと1回発動できれば御の字なうえ、効果自体もささやかで少々物足りない。所持継承スキルはだいぶ散漫としているので、必殺か攻撃に特化させたい。


水ノ魔王獣 マガジャッパ /近/怪獣/★★
・移動力:2 ・攻撃/必殺属性:毒/毒 ・弱点:火
・デバッファー ・汎用性:D ・襲撃/防衛適正:D/D

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 能力ダウンに長けたデバッファーで、存在自体が災害級な魔王獣らしい性能。命中率・回避率ダウンに防御(遠)ダウン、毒状態付与といろいろな手段で相手を弱化できる。リーダースキル命中 小ダウン(全)は汎用性が高く、今のところ所持しているのはマガジャッパとラゴラスだけ。相手の命中率を大ダウンできる必殺技も優秀で、範囲が広く複数の相手を巻き込みやすい。回避チームのデバッファーとしては悪くない性能だが、グエバッサー以外の回避型タンクとバフを共用しにくいの近距離型なのが懸念点。

 基本性能はまあまあだが、所持継承スキルは下位互換ばかりなので育成の手間は高め。DNAを入手できるイベント「強化マガジャッパ襲来」が定期的に開催されているが、スキル継承役としてはあまり魅力が無い。

 

 

 

【技・★1】

凶悪宇宙人 ザラブ星人 /遠/宇宙人/★(イベント限定)
・移動力:2 ・攻撃/必殺属性:無/毒 ・弱点:火
・アタッカー ・汎用性:D ・襲撃/防衛適正:D/E

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 ナースやホーと同じく、レア怪獣登場DNAクエストおよび降臨クエストで入手可能。比較的手軽に★6を狙える遠距離アタッカーであり、とりあえず戦力を充実させたい初心者にとってはありがたい存在。

 相手を倒すと必殺技攻撃力、運が中アップするアタッカー。似た固有スキルを持つベムラーと比べると、向こうは攻撃力を上げられる点と必殺技の範囲で勝る。ザラブ星人は遠距離型である点と、汎用性の高いリーダースキル攻撃力 小アップ(全)が強み。継承スキルでは必殺技攻撃力 大アップが強力。戦力が充実してきたら継承用に回すのもいいだろう。

 下準備をして力を蓄え、一気に大暴れするという意味では原作通りの策士っぽさがなくもないが、スキルも必殺技も自己強化しかできないわりに、自身の性能が並程度なのが物足りない。必殺技は撃てる機会が少ないし、運ももともと低いのであまり恩恵を感じられない。最大のライバルは自身の変身後であるにせウルトラマンで、パラメータ配分はまったく同じなほか、イベントで入手できるの遠距離アタッカーである点が共通している。一応、必殺技の範囲はザラブ星人のほうがやや広いが、移動力と固有スキルの使い勝手ではにせウルトラマンに軍配が上げられる。


宇宙海人 バルキー星人 /遠/宇宙人/★
・移動力:2 ・攻撃/必殺属性:無/水 ・弱点:毒
・タンク(回避) ・汎用性:E ・襲撃/防衛適正:E/D

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 メインクエストAct.1クリアのミッション報酬で、序盤ならば数合わせアタッカーとして活躍してくれる。パラメータは回避率・運が高めで、スキルはHPと回避率アップを中心に自らのサバイバビリティを高めるものばかり。
 光太郎に焼死させられた敗北経験を糧にしたのか、「火属性の攻撃・必殺を受けた時に回避率&運を中アップ」という固有スキルを持つ。火属性のアタック手段は他の属性に比べれば圧倒的に多いものの、通常攻撃が火属性の怪獣は命中率が高めの連中が多く被弾しやすい。火属性の必殺技もかなり多いが、これも発動機会は限られるし回避し損ねたらまず即死する。ユニークではあるが、なかなか活かす場面がない固有スキルと言える。

 の回避型タンクの中では唯一の★1で進化させやすい。固有スキルを活かすにも回避率は必須となるため、回避 アップ(+固定値) の継承スキルなどで補強してやろう。貴重な水属性のアタック手段持ちなので、今後の探査クエストなどで出番が来る可能性はある。


宇宙海獣 レイキュバス /遠/怪獣/★/覚醒対応(優先度:C)
・移動力:2 ・攻撃/必殺属性:無/氷 ・弱点:雷
・デバッファー ・汎用性:D ・襲撃/防衛適正:C/D

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 メインクエストAct.6クリアのミッション報酬。原作通りに炎と氷を使いこなし、2種類の状態異常(火傷と凍結)を与えられる珍しい怪獣。どちらも継続ダメージを与える同じ効果で、かつ重複しないので戦況をひっくり返すようなものではないが、あるに越したことはない。
 攻撃した相手を確率で火傷、かつ回避率を中ダウンさせる固有スキルを持ち(前者は命中したときのみ、後者は回避された場合も発動する)、高難易度クエストでも渋い活躍ができるサポート役。ちなみに必殺技は高確率で相手を凍結させる効果。パラメータ配分はデバッファーらしく平均的なので、相手のデバフ・味方のバフに徹しよう。

 同じく炎と冷気を操るラゴラスエヴォの参戦にあわせて覚醒対応。火傷付与が超確率&隣接する相手も巻き込めるようになり、回避率ダウンが大ダウンに強化された。また、凍結状態の相手に攻撃する時、火傷状態の相手に必殺技を放つ時、それぞれアタック時からフェイズ終了まで防御力を大ダウンできる。混成火傷チームの火傷付与役として、あるいは回避タンク対策を重視した凍結チームの火力役として入れるのがベストだろう。


三面異次元人 ギギ /遠/宇宙人/★(ショップ限定)
・移動力:3 ・攻撃/必殺属性:無/闇 ・弱点:光
・アタッカー ・汎用性:C ・襲撃/防衛適正:D/E

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 原作通りの高速移動が特徴のアタッカー。三面仲間(?)のダダが味方の回復に長けているの対し、ギギは固有スキルと必殺技追加効果で自らのHPを回復しながらしぶとく戦えるのがウリ。…なのだが「攻撃を回避したとき」という固有スキルの発動条件がなんとも微妙。回避に成功=ダメージを受けなかった時にHPを回復するというのはちぐはぐ感が否めない。元々の回避率が並レベルなので、継承スキルや仲間のデバフスキルでお膳立てしてもなおアリーナや高難度クエストでの発動は期待できない。ちなみに固有スキルには回避成功時に移動力が+1される効果もある。持ち前の機動力と、所有者の少ないレアなリーダースキル命中 中アップ(遠)は悪くないので、回復能力に関してはオマケ程度に考えて遠距離バフ・バフを積み、サポート寄りのアタッカーとして育てるのが無難。


宇宙凶険怪獣 ケルビム /近/怪獣/★
・移動力:2 ・攻撃/必殺属性:無/火 ・弱点:氷
・タンク(防御) ・汎用性:E ・襲撃/防衛適正:E/D

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 2ターンごとに命中率・攻撃力が中アップするというパンドンのような固有スキルを持ち、発動中は並のタンクと比べれば多少マシな攻撃性能になる。ただ元の攻撃力・命中率ともにかなり低いので、一般的なアタッカーにはまったく及ばない。劇中では頑丈さよりもむしろ攻撃性のほうが印象深かった気もするし、どうしてこういうパラメータになったのかはいまいち謎。「弱点を補うより、長所を伸ばすほうが強力」という『ウルバト』の基本を身を持って教えてくれる怪獣と言えるかもしれない。イベント「強化ケルビム襲来」では障害物を破壊することでパワーアップする能力を持ち、同様の固有スキルを持つゲランダ、メルバと共に暴れまわっていた。
 ★1では育てやすいとはいえ、の防御型タンクにはライバルが多すぎる。ケルビムの強みは、現状唯一無二のリーダースキル防御力(近) 中ダウン(速)だろうか。強固なユニットが登場するイベント・探査クエストが登場した際は活躍の余地があるかもしれない。


光ノ魔王獣 マガゼットン /近/怪獣/★
・移動力:2 ・攻撃/必殺属性:無/光 ・弱点:闇
・アタッカー ・汎用性:C ・襲撃/防衛適正:D/E

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 ★1とは言えゼットンはゼットン、攻撃力の高さは全怪獣の中でも上位に数えられる。所持継承スキルも使いやすいものが揃っており、適当な攻撃強化系スキルを2つほどつければ即完成形になる。固有スキルは攻撃した時に相手の回避率と命中率を中ダウンさせるもので、仮に回避されても発動するので使いやすい。効果は自フェイズ中で切れるので、相手の命中率を下げてもまったく意味はないのだが…(ちなみに反撃は命中率に関わらず必ず当たる)。★1の近距離アタッカーの中では扱いやすく、探査レベルの高難度クエストでもダメージソースとしてじゅうぶん活躍できる。汎用性の高いリーダースキルや、の味方全員の攻撃力を中アップする必殺技も悪くない性能。

 

 

 

【技・★2】

コイン怪獣 カネゴン /近/怪獣/★★
・移動力:3 ・攻撃/必殺属性:無/地 ・弱点:雷
・バッファー ・汎用性:D ・襲撃/防衛適正:E/E

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 『ウルバト』配信開始直後はログインボーナス等で簡単に★4まで進化させられ、高ランクのほうが基本的に強いということを初心者に教えてくれた。稼ぎに向く取得ゴールド 小アップ取得経験値量 小アップのスキルを持つのが特徴。リーダースキルの効果はカネゴンが進化していくと強化され、最大で獲得ゴールドが5%アップする。スキルエッグデバイスで作ったハズレスキルエッグ売却で大量に資金を稼げるベテランブリーダーには有難みが薄いが、新米ブリーダーのクエスト周回のお供としては悪くない。
 元が小学生だし仕方ないのだが、HP以外のすべての能力が平均以下で戦力としてはあまり当てにならない。移動力の高さが裏目に出て、オートにしておくと敵陣に突っ込んでいって叩き潰される光景をよく見る。行動完了時に相手と隣接しているとHP小回復&SP小アップする固有スキル、2ターンのあいだ運が中アップする必殺技も実戦向きとは言い難い。全体バフ・デバフ系のスキルを継承させて、味方のサポートに徹したいところ。

 


異次元宇宙人 イカルス星人 /近/宇宙人/★★
・移動力:2 ・攻撃/必殺属性:無/火 ・弱点:氷
・バッファー ・汎用性:D ・襲撃/防衛適正:D/D

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 固有スキルは自分以外の味方が倒されたときに、全員の必殺技攻撃力・命中率をアップするというもの。効果は累積するものの、味方の頭数が減れば総合火力はダウンするので保険程度にしかならない。ただ、クエストで敵として出てきた場合は意外と危険なので早めに倒しておきたいところ。

 ギエロン星獣やジェロニモンといった復活要員、ギャラクトロン等の強力な必殺技を持つアタッカーがいるチームでは火力アップに貢献できる。ダメージランキングが開催されているイベントではサポート役として輝くかもしれない。全裸中年男性みたいなモーションや声はメチャクチャ面白いので活躍させてやりたいのだが、現状、一部のクエスト以外ではジオラマくらいしか出番がない。

 異次元つながりのブルトンとは、必殺技強化に長けたのバッファーであり、同種のリーダースキル・継承スキルを持つなど共通点が多め。向こうは総戦闘力で勝り、必殺技の追加効果でも味方全体の必殺技攻撃力をアップできるが、イカルスは前述の通り復活怪獣とコンボできるのが強みと言える。

 
カプセル怪獣 アギラ /遠/怪獣/★★(限定マーケット)/覚醒対応(優先度:D)
・移動力:2 ・攻撃/必殺属性:無/地 ・弱点:水
・デバッファー&バッファー ・汎用性:D ・襲撃/防衛適正:D/D

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 テレスドンと並んで「斜め前からのアングルだと印象が違う」怪獣トップ2(個人の感想です)。固有スキルは攻撃した相手の命中率と運を中ダウンさせるものだが(覚醒後は大ダウンに)、アギラ自体は特に回避チームとのシナジーが無いので微妙。相手のデバフが得意なほか、USP(ウルトラ必殺技ゲージ)を手早く溜める手段に長けている。USP系のスキルを持っている怪獣は今のところアギラ以外におらず、その点では非常に個性的。

 リーダースキル回避 中ダウン(速)と、現状唯一の継承スキル必殺技攻撃力 中ダウン(速)はそれなりに有用。より個性を活かすのならばUSP系のほか全体バフ・デバフスキルを継承させて高難度クエスト・通常クエストでのサポート役に徹したいところ。ちなみに覚醒すると、ウルトラ必殺技発動後に永続的に味方の移動力を+1アップ、必殺攻撃力を中アップすることが可能。さらに味方にミクラスがいると味方のカプセル怪獣の攻撃力が大アップ・HPが小アップ、ウインダムがいると防御力が大アップ・命中が小アップする。覚醒したウインダム、ミクラス、アギラ3体をチームに入れた場合、それぞれのHPと命中が1.3倍(小アップ×3)、攻撃力と必殺技攻撃力が1.6倍(大アップ×2)、防御力が1.66倍(大アップ×2)する計算になる。覚醒後も前もウルトラ必殺技ありきの性能なためアリーナでは真価を発揮できないが、カプセル怪獣たちでチームを固めれば探査を含む高難度クエストでも活躍の場はあるだろう。

 

用心棒怪獣 ブラックキング /近/怪獣/★★

・移動力:2 ・攻撃/必殺属性:無/火 ・弱点:水
・アタッカー ・汎用性:D ・襲撃/防衛適正:D/E

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 搦め手が多い怪獣の中では珍しく、シンプルなアタッカー。自らの攻撃性能を上げるスキルが揃っており、所持継承スキルにもムダが無い。必殺技の追加効果でも自らの攻撃力を2ターンのあいだ大アップ可能。即戦力になれる頼れる用心棒。
 固有スキルは行動完了時に相手と隣接していると、攻撃力と命中率が2ターンのあいだ中アップするというもの。効果自体は悪くないが1ターン目から発動できる機会は少なく、恩恵にあずかれるのも発動した次のターンになるため、本領発揮までに少々時間がかかる。隣接した相手から攻撃される可能性も高いので、囮役のタンクによるケアが必要。使えなくはないが、どうにも決め手に欠ける印象は拭いきれない。


異次元超人 巨大ヤプール /遠/宇宙人/★★/覚醒対応(優先度:C)
・移動力:2 ・攻撃/必殺属性:無/闇 ・弱点:光
・タンク(回避)&バッファー&デバッファー ・汎用性:C ・襲撃/防衛適正:B/C

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 ゲーム作品ではなんだか微妙な印象の強い巨大ヤプールだが、『ウルバト』では高い回避率と暗闇の状態異常で攻撃をヒョイヒョイかわす、いかにも黒幕チックないやらしいユニット。素材クエストの周回から強敵が出現するイベントクエストまで、どこでも活躍できるのでどんどん前線に出てもらおう。
 固有スキルで攻撃した相手のSPを小ダウンすることができ、必殺技発動を阻止できるほか、中確率で暗闇も付与できる。攻撃が当たらないと発動しないので、回避率だけでなく命中率もある程度継承スキルで伸ばしておきたい。

 覚醒すると暗闇付与が超確率に強化され、リーダーの時に味方の『ウルトラマンA』ユニットの攻撃&必殺技が大アップ、移動力が+1アップする。この強化能力はさすがに強烈で、上がる能力・上昇値ともに申し分ない。ただ現状、『A』ユニットにはがいないため混成:力技速で組む時は枠に悩む。攻撃集中持ちのペダニウムゼットン、メカゴモラ(メガ振動波)辺りが無難だが、移動力が上がっている味方よりも先行させなければいけないため移動力 アップを付けておきたいところ。また、自らが倒れたときに超確率で超獣をランダム召喚する能力も手に入れた。具体的には超獣と名の付くヤプール製のユニットのことで、Uキラーザウルスも含まれる(ヤプール製ではないバジリスは除かれる)。固有・必殺はレベル10だがレベルは80、命令不可なので戦力としてはあまり期待できない。こちらはあくまでオマケ程度に考えておこう。リーダー時のバフ自体は悪くないが、これを活用するつもりが無いなら覚醒の優先度は低めと言える。

 基本性能自体は悪くなく、固有スキル・必殺技効果(回避率大アップ)もパラメータ配分と噛み合っている。『A』統一チームのほか、回避寄りの宇宙人チームでも採用できる優秀な★2ユニットと言える。


円盤生物 ノーバ /遠/怪獣/★★
・移動力:2 ・攻撃/必殺属性:無/毒 ・弱点:風
・デバッファー ・汎用性:D ・襲撃/防衛適正:E/E

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 見た目通りのクセの強さを持ち、「状況は選ぶが、ハマればMVP級の活躍ができる」という愛すべきヤツ。必殺技関連のデバフに長けており、固有スキルは待機した時に隣接する相手の必殺攻撃力を中ダウン&SPを小ダウンするというもの。フェイズの最後にSPが満タンになっている相手に対して発動させれば、必殺技発動を妨げられる。位置取りによっては複数の相手に発動できるのが強み。…だったのだが、昨今は広い範囲に対して必殺技封印を発動できるテレスドンに出番を取られてしまうことがほとんど。

 アリーナ防衛では固有スキルの発動には期待できないが、必殺技攻撃力 小ダウン(全)のリーダースキル・継承スキルが輝く(前者は現状ではノーバしか所持していない)。ただ最近は必殺技よりも攻撃力をバフで強化しているチームも多く、防御型タンクの相棒としての価値も下落気味。おもな仕事はフワフワ相手の周りを漂うことなので、スキルは生存率を高めるものか全体バフ・デバフ系が良さそう。


冷凍星人 グローザム /遠/宇宙人/★★/覚醒対応(優先度:C)
・移動力:3 ・攻撃/必殺属性:無/氷 ・弱点:火
・アタッカー ・汎用性:C ・襲撃/防衛適正:D/C

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 「死んでもHPを中回復して復活する」という反則級の固有スキルを持つ。発動は中確率なので、1度のバトルで何度も復活することもある。減ったHPは必殺技で回復できるほか、攻撃性能自体もそれなりにあり、移動力3の遠距離型なので急襲もお手の物。スペックだけを見れば暗黒四天王の名にふさわしい実力者に見える。ただパラメータ的に評価できるのはHPくらいで、攻撃・必殺・命中はまあまあ、回避と運は半端、防御はやや低めといったところ。戦闘力で大きく勝り100%確実に復活するギエロン星獣、タフさで大幅に上回り攻撃集中効果まで発動できるガピヤ星人サデスの登場もあり、ややアイデンティティが失われ気味だった。

 2020年10月にデスレムと共に覚醒対応。覚醒後は復活時のHPが大回復になったほか、攻撃した相手をウルトラ確率で凍結、さらに凍結状態の相手に通常攻撃()する時のみ攻撃力が大アップする。凍結チームでは癖のないアタッカーとして採用できるだろう(ちなみに通常攻撃はどう見てもヘルフローズンブロスだが、氷属性は付いていない
)。また、デスレムが味方にいる時はデスレムの攻撃力が大ダウン、自らの攻撃力が大アップする。デスレムはタンク的運用ができるのでSPが溜まりやすいうえ、覚醒後は範囲の広い必殺技もかなりの回転率で放てるため、攻撃力が下がってもそれほど大きなデメリットにはならなかったりする。パッと見だと足を引っ張りあっているようだが、実はお互いの強みを活かした息の合ったコンビと言える。

 

 

【速・★1】

宇宙竜 ナース /近/ロボット/★(イベント専用)
・移動力:2 ・攻撃/必殺属性:無/雷 ・弱点:地
・タンク(回避) ・汎用性:C ・襲撃/防衛適正:D/D

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 DNAクエストのレア怪獣登場イベント、降臨クエストで入手可能。イベント産怪獣の中では、すべてのスキルとパラメータ配分がうまく噛み合った優等生。回避 大アップの継承役としても便利。

 固有スキルの効果で1ターン目は移動力が+3されるため、初手からいきなり相手に攻撃できる。敵陣に突っ込ませて回避しつつSPを溜め、必殺技を放ってさらに回避率をアップ、という必勝パターンが決まりやすい。最初期のアリーナは回避型タンクの天下で、ナースにはマガバッサーやバルタン星人対策に起用されがちなガッツ星人の固有スキルの対象にならないという強みがあった。昨今は命中の高いアタッカーや、必中の反撃を100%繰り出すドラゴリー・マガオロチなどの登場によって回避型タンク一強時代はすでに過ぎ去っている。ナースも現状のアリーナで防衛を任せるのは心もとないが、通常のクエストや一部の探査クエストでも出番はあるので育てておく意義はじゅうぶんある。

 高い機動力はそれだけで優秀。かく乱戦術を活かしたり、あえて回避を捨てて特攻し「味方が倒された時」「敵味方が倒れた時」に固有スキルが発動するバキシムやボガールなどをサポートするのも面白い(その際の継承スキルは味方バフ・敵デバフを詰め込んでおこう)。素の回避率自体は実はそれほど高くないため、回避 中アップ回避 小アップを継承させるくらいなら回避 アップ(+固定値)命中 小ダウン(全)のほうが効果的かもしれない。リーダースキル回避 中アップ(近)もうまく活かしてやりたいところ。


凍結怪獣 ガンダー /遠/怪獣/★/覚醒対応(優先度:A)
・移動力:2 ・攻撃/必殺属性:無/氷 ・弱点:火
・デバッファー ・汎用性:C ・襲撃/防衛適正:C/C

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 固有スキルは自フェイズの最初に発動し、氷属性が弱点の相手に対してSP小ダウン&回避率中ダウンの効果がある。氷弱点はそれなりに多いが、今のところ回避率の高い怪獣はおらず恩恵を感じにくいうえ、発動タイミングの関係で相手の必殺技を阻止する目的ではあまり役に立たない(ちなみにウルトラセブンは闇弱点なので効果が無い。残念)。リーダースキル命中 中アップ(速)は悪くないが、同じリーダースキルと強力な固有スキルを持つニセウルトラマンダイナと比べるとちょっと立場が苦しい。

 ユニークな性能ながら活躍の場は少ない…という状況が続いていたものの、2020年8月に覚醒対応。覚醒すると凍結状態の相手にも効果が及ぶようになり、SP・回避率ダウン効果が大に上昇。また、奇数ターンの自フェイズ開始時に相手全体を中確率で凍結させることが可能になり、汎用性はかなりマシになった。デバフ判定は凍結判定のあとに行われているようで、凍結に成功すればそのまま回避大ダウンが可能。探査3-Gで大活躍してくれるほか、凍結チームでも戦略の要になる存在だが、現状で凍結チームに組み込めそうなのはのラゴラス、のグローザムくらいであまり選択肢がない。混成で組めるようでウーかギガスかスノーゴン辺りに来てほしいですね。

 

宇宙昆虫 サタンビートル /近/怪獣/★
・移動力:2 ・攻撃/必殺属性:毒/毒 ・弱点:氷
・デバッファー ・汎用性:D ・襲撃/防衛適正:D/D

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 メインクエストAct.4クリアのミッション報酬でDNA入手可能。原作ではゴミを吐いて攻撃していたが、『ウルバト』でも毒特化の怪獣。通常攻撃・必殺技ともに毒属性で、固有スキルの効果で相手を毒状態にすることもできるなど、セグメゲルやのマガジャッパとは共通点が多め。限定マーケット怪獣以外で唯一、攻撃力 小ダウン(全)を持っているのも特徴。
 固有スキルは攻撃相手に中確率で毒&2ターン命中小ダウン付与というものだが、相手への影響は小さくあまり効果を実感できない。一方、リーダースキルと必殺技で防御力を大きく下げられるのは意外と珍しい能力で、こいつならではの個性と言える。にはキングジョーをはじめ頑強なタンクも多いため、アリーナ襲撃役や探査を含む一部の高難度クエストでは出番があるかもしれない。

 

宇宙有翼骨獣 ゲランダ /遠/怪獣/★
・移動力:2 ・攻撃/必殺属性:無/火 ・弱点:水
・アタッカー ・汎用性:C ・襲撃/防衛適正:D/E

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 メインクエストAct.5クリアミッション報酬。映画の中では前座的扱いだったが、『ウルバト』では即戦力として頼りになる怪獣。特徴的なシルエットもなかなかカッコよく、ジオラマでいろんな角度から眺めていても飽きることがない。
 の★1遠距離アタッカーの中ではリーダースキルも所持継承スキルも扱いやすい。スキルエッグや適当な★2怪獣から攻撃力 中アップ攻撃力 アップ(+固定値)辺りを継承させれば高難度クエストでも活躍可能。

 障害物を壊すと発動する固有スキルは、ステージによってはまったく発動の機会がない。永続的な最大HP中アップに加えてSPが即座に中アップする効果自体は悪くないが、どちらもゲランダにとっては重要度が低め(もともと打たれ弱いのでHP増加の恩恵が少ない&必殺は射程・範囲ともに通常攻撃と同じで追加効果も地味)。あくまでオマケ程度と考えておこう。


邪悪宇宙生命体 ワロガ /遠/宇宙人/★
・移動力:3 ・攻撃/必殺属性:無/闇 ・弱点:光
・アタッカー ・汎用性:C ・襲撃/防衛適正:D/D

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 メインクエストAct.7クリアミッション報酬。いかにも素早そうなイメージがあるだが、移動力3の遠距離は意外に少ない。ワロガはダダやケムール人と比べればまだアタッカー向きの性能で、数合わせとしてはじゅうぶん過ぎる性能。必殺技は十字型の広範囲で、威力も及第点の数値なのでそこそこ使いやすい。
 相手を倒した時にHPを中回復(&SPを小アップ)する固有スキルを持ち、HPも高めだが防御・回避ともに低く、総合的に見れば大した耐久力ではない。尖兵らしくお手軽な俊足アタッカーとして運用してやろう。継承スキルは攻撃力アップ系+HP 大アップでほぼ完成するので財布に優しい。

≪育成例≫

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 「とりあえず余ってるスキルエッグ使いました」的なお手軽育成だが、それでも攻撃力1800以上、HP1000近くには達する。伸びしろ自体は悪くない。


骨翼超獣 バジリス /遠/怪獣/★(ショップ限定)/覚醒対応(優先度:B)
・移動力:2 ・攻撃/必殺属性:風/闇 ・弱点:地
・アタッカー&バッファー ・汎用性:C ・襲撃/防衛適正:B/D

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 にはショップ限定の★1怪獣がただでさえ多く、入手しやすさと総合戦闘力で勝るゲランダの存在もあって少々影が薄かったのだが、後述する覚醒固有スキルによって独自の立ち位置をゲット。アタッカーとして見ればじゅうぶんなパラメータ&無駄のない継承スキルを持ち、初心者には即戦力として、ベテランブリーダーには固有スキルを活かしたコンボ要員として、それぞれ活躍が見込める。汎用性と専門性を兼ね備えた★1怪獣の出世株と言える。ちなみに空を切り裂く派手なアタック演出も一見の価値あり。

 固有スキルは自分以外の味方が攻撃・必殺で倒されると自身の回避率・防御力(近)がアップする効果。発動機会はそれなりにあるものの、もともとの耐久面が低めなので無いよりはマシな程度。通常攻撃が風属性なのも特徴だが、役立つのは探査2-Hくらいだろうか。

 スキューラの登場に併せ、★1怪獣としては珍しく覚醒対応。覚醒後は条件が「自分以外の味方のHPが0になった時」に変化し、固有スキルの追加ダメージ等で倒された時も発動するようになった。効果は「の味方の回避・防御・攻撃が3ターンのあいだ大アップ」と大幅に強化。さらに味方のキングオブモンスのアタック時にガード封印、ダメージ中アップの効果を付与することができる。

 覚醒後は味方を強化するバッファーとしての側面が強くなったと言える。キングオブモンスとの赤い玉混成チームはもちろん、ギエロン星獣や覚醒ガゾート等の復活怪獣と組んで、味方が倒された時にパワーアップするゾアムルチ等を支援するのも面白そうだ。

≪育成例≫

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 上記の混成チームでの使用を前提とした型。攻撃力は問題ないものの素の命中率にやや不安があったため、命中 大アップを継承させている(レギュラン星人の攻撃封印を引き受ける役でもある)。近距離バフスキルを共用できないものの、キングオブモンスの露払い程度は問題なくこなせる。


スペースリセッター グローカービショップ /近/ロボット/★(ショップ限定)
・移動力:2 ・攻撃/必殺属性:無/闇 ・弱点:雷
・タンク(防御) ・汎用性:D ・襲撃/防衛適正:E/D

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 劇場版のボス的存在で、いかにもなメカメカしい外見のおかげかゲーム作品でもわりかし見かける。タッコングやケンドロスの発展形のようなフォルムが個性的。
 固有スキルは味方が必殺技を放つたびに、自分の必殺技攻撃力と命中率が中アップするもので、そのフェイズ中は効果が累積する。グローカービショップの必殺技は攻撃範囲が広いため、低めの威力を固有スキルで補えればそれなりに強力。仮に討ち漏らしたとしても、追加効果で相手の必殺技攻撃力を大ダウンできるので、必殺技で逆襲されても耐えやすくなる。固有スキルと必殺技の性能がそれなりにうまく噛み合っており、かつての高難易度クエスト「兄弟の絆」で攻略のカギとなったこともあった。ただ、必殺技アタッカーが充実している現状では火力不足が気になるところ。アリーナ防衛では守りを固める固有能力がほぼ無いこともあり、たいした時間稼ぎは期待できない。


帝国機兵 レギオノイド(α) /近/ロボット/★(ショップ限定)
・移動力:2 ・攻撃/必殺属性:無/地 ・弱点:火
・バッファー ・汎用性:E ・襲撃/防衛適正:E/E

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 味方全員の攻撃面の底上げができるアタッカー。相手を倒すことで固有スキルが発動、全員の攻撃力と運を小アップ可能。リーダースキル、継承スキルでも味方全員をパワーアップできるのだが、効果自体はぶっちゃけ地味。運が小アップしても戦況にはほとんど影響は無く、レギオノイド(α)自体の能力は並で必殺技も隣接1マスにしか攻撃できないため、そもそも発動させる機会が少ない。全員がアタッカーの、それこそ侵略軍のようなチームでも恩恵はあまり感じられないだろう。遠距離戦に特化したβは、めちゃくちゃカラーリングが格好良いダダ・カスタマイズはとして登場している。

 

 

【速・★2】

隕石怪獣 ガラモン /遠/ロボット/★★
・移動力:2 ・攻撃/必殺属性:無/地 ・弱点:雷
・タンク(防御) ・汎用性:E ・襲撃/防衛適正:E/D

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 元祖ロボット怪獣。『ウルバト』では各種ノーマルミッションの報酬でDNAが入手でき、カネゴンと並んで初心者を手助けしてくれる存在。
 味方が相手を倒すたびに固有スキルが発動、防御力が中アップし、SP獲得率が小アップする。必殺技は威力にはあまり期待できないものの、味方全員のHPを小回復することが可能。ただ「こちらが優勢になるほど守りが堅くなる」というのはちぐはぐ感がある。現状、この個性が活きる場面は正直思いつかない。攻撃集中効果が使えれば、防衛クエストで輝いたかもしれないが…。

 

磁力怪獣 アントラー /近/怪獣/★★
・移動力:2 攻撃/必殺属性:無/地 弱点:水
・タンク(防御) ・汎用性:D ・襲撃/防衛適正:D/D

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 スペシウム光線を跳ね返した頑強な甲殻は『ウルバト』でも健在。初期の所持継承スキルに無駄がなく、待機するだけで防御力がアップする固有スキルもシンプルながら使いやすい。必殺技発動時のみだが、攻撃集中効果も持っているのも特徴で、タンクとして欲しい能力は一通り揃っている。総じて、初心者でも扱いやすい手堅いタンクと言える。低ランクの防御型タンクはわりかし層が厚いが、【連携:同族】を発動できる点、攻撃集中効果の有無で差別化できるだろう。のアントラー(磁力光線)とは異なり、こちらは例え連携をフル発動させてもアタッカーには遠く及ばないが、堅さだけならあらゆるタンクの中でもトップクラスになる。


カプセル怪獣 ウインダム /遠/怪獣/★★(ショップ限定)/覚醒対応(優先度:C)
・移動力:2 ・攻撃/必殺属性:無/光 ・弱点:雷
・タンク(防御) ・汎用性:C ・襲撃/防衛適正:D/D

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 カプセル怪獣第1号にして、味方として戦ってくれる怪獣の元祖。ポケモンで言えばフシギダネ的な立ち位置のウインダムは『ウルバト』でもレジェンド的な扱いであり(多分)、そのDNAはショップ販売のみ、しかもブリーダーズコインでしか買えないというレア度を誇る。DNAクエストも無いので、進化させるなら相性別DNA[速]をつぎ込むのが現実的。継承スキルは非常に豪華なのだが、防御力 大アップ以外はウインダム自身のパラメータとはあまり噛み合っていない。ただ命中 小ダウン(全)を初期から持っているのはウインダムだけなので、回避特化チームを作るなら継承役として役立つ。★2なのでDNA300個で生成できるのもうれしい。

 自身はだが、固有スキルは自身が攻撃を受けるたびにの味方を強化するというユニークなもの。バジリスともども混成チームに入れてみるのもよさそうだ。覚醒するとのすべての味方の防御力とSPを中アップできるようになり、使い勝手が増す。さらにバトル開始時にミクラスがいると味方カプセル怪獣の攻撃力が大アップ・命中が小アップ、アギラがいると必殺技攻撃力が大アップ・HPが小アップする。覚醒したウインダム、ミクラス、アギラ3体をチームに入れた場合、それぞれのHPと命中が1.3倍(小アップ×3)、攻撃力と必殺技攻撃力が1.6倍(大アップ×2)、防御力が1.66倍(大アップ×2)する計算になる。カプセル怪獣で混成チームを組めば、ミクラスの固有スキルでウインダムを先行させ、味方のSPを手早く貯める戦術を取りやすくなるだろう。ただ自身があまり火力に貢献できない点、攻撃集中効果を持っていない点などを考慮すると、味方のSPアップ役としてはキリエロイドやエレキング(放電光線)に一歩及ばないといったところ。

 

サーベル暴君 マグマ星人 /近/宇宙人/★★/覚醒対応(優先度:C)
・移動力:3 ・攻撃/必殺属性:無/闇 ・弱点:毒
・アタッカー&デバッファー ・汎用性:D ・襲撃/防衛適正:C/C

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 右手はマグマサーベル、左手のカギ爪とマントは未装着という『レオ』1話スタイル。命中率アップに特化した性能で、相手を攻撃すると固有スキルの効果で命中率が上がり、必殺技の効果でも命中率がアップする。なにげに攻撃力は高くバードンに匹敵するほどだが、ウリである攻撃力を固有能力でアップできないのは少々物足りない。
 『メビウス』でザムシャーと対決した際は瞬殺されたが、『ウルバト』でも「命中特化のアタッカー」という意味でザムシャーとはライバル関係にある。どちらかと言えばマグマ星人は通常攻撃、ザムシャーは必殺技の威力に長けている。しかし素の命中率はザムシャーのほうが圧倒的に高く、現状アリーナで見かけるメジャーな回避型タンクはばかりなので、それらの対策をしたいのなら相性的にもザムシャーのほうが使いやすい。の命中・回避をデバフできるスキルを持つのも特徴だが、ガゾートとセグメゲルの登場でその強みもだいぶ薄れてしまった。

 双子怪獣の参戦に併せて、2020年11月に覚醒&移動力が3に上方修正。覚醒すると攻撃時のバフが必殺・命中・運の大アップに強化、効果も3ターン持続になり重ねがけしやすくなっている。さらにブラックギラス・レッドギラスの移動力を+1できるほか、1ターン目にブラックギラスがいる場合、相手全体を高確率で鈍化&自身はターン中潜伏することが可能になる。3ターン目にレッドギラスが味方にいた場合も同様の効果を発揮。相手の先制による撃破は何としても避けたい1ターン目、混戦になりやすい3ターン目に潜伏できるのは悪くない。鈍化は一見地味な状態異常だが、「AIは移動力の分は必ず移動する」ことを念頭に置き、ブラックギラスの鈍化した相手を移動力0にする固有能力もうまく使いわければ、近距離型だろうが遠距離型だろうが攻撃を完全に封じることもできる(かなり相手に寄るが…)。第1話星人らしい急襲特化ぶり、厭らしく卑劣な策士ぶりがよく表れている覚醒といえる。ちなみにリーダースキルはマグマ星人の命中 中ダウン(力)より双子怪獣の攻撃力 中アップ(近)の方が圧倒的に優秀。リーダーの座が危うい。

 双子と組んだ混成チームを作る場合、残り枠にはタンク役を雇うのが定番になりそうだが、マグマ星人2体採用も悪くなさそうだ。双子の移動力が2アップし、鈍化の確率も高まるので相手を分断してからの各個撃破がやりやすくなる。アリーナ防衛役としては、1ターン目からのいきなり全体鈍化は相手の計算を狂わせやすく破格の能力だが、高速紙耐久のパラメータ自体はあまり防衛向きではないので工夫が必要。メガトン怪獣の特性があれば3ターン目まで生き延びやすくなるか?

 
超古代竜 メルバ /遠/怪獣/★★
・移動力:2 ・攻撃/必殺属性:無/風 ・弱点:地
・アタッカー ・汎用性:E ・襲撃/防衛適正:D/E

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 ゴルザと並べたいところだが、両者間のシナジーは残念ながらほぼ皆無。ゴルザ【Re】とも障害物をお互いに取り合うことになりかねず、相性はよろしくない。

 継承スキル・固有スキルともに回避率アップに特化しているものの、もともとの回避率が非常に低いので活かしにくい。せめてメルバのパラメータ配分がゴルザと同じだったら良かったのだが…。探査4-Bで見せる鬼のような回避はいったいなんなんだ。固有スキルの効果は、障害物を壊すと必殺技攻撃力・回避率が2ターンのあいだ中アップするというもの。前述の通り回避率が上がっても恩恵は少なく、必殺アップも次のターンまでしか効果が無いのでタイミングを計るのが難しい。

 低レアの遠距離アタッカーとしては、似たような固有スキル発動条件を持ちリーダースキル・継承スキルが使いやすいゲランダ、覚醒することで大幅にパワーアップしメルバ同様に風属性のアタック手段を持つバジリスなどライバルが多い。どうにも肩身が狭いが、優位点である必殺技攻撃力の高さを活かせるチームなら出番がある。かもしれない。メルバを活躍させたいのなら、ゴルザ【Re】との相性も良好なのメルバ【Re】を軸にするほうがオススメ。


マケット怪獣 ファイヤーウインダム /近/怪獣/★★
・移動力:2 ・攻撃/必殺属性:無/火 ・弱点:雷
・デバッファー ・汎用性:E ・襲撃/防衛適正:D/D

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 ウインダムと似ているが性能はまったく異なる。ちなみにファイーウインダムでもファイヤーウンダムでもないので注意。『メビウス』本編ではゼットンとパンドン(あとブラックエンド)のデータをインストールされていたはずだが、『ウルバト』では特に能力的な共通点は無い。

 リーダースキル攻撃力 小ダウン(全)はどんな状況でも腐らず便利だが、固有スキルは非常に微妙。「次フェイズまで相手全体の攻撃力と回避率を小ダウン」というささやかな効果は、「必殺技を受ける」という厳しい発動条件にまったく見合っていない。
 継承スキル攻撃力 中ダウン(速)はなかなかのレア物。相手と味方の戦力が拮抗しやすいアリーナ防衛なら、豊富なデバフスキルを活かすことができる。ただリーダースキル攻撃力 小ダウン(全)と継承スキル攻撃力 中ダウン(速)を活かしたいなら、状態異常(石化)にも長けたガーゴルゴンという強力なライバルがいる。相性は異なるので一概に下位互換とも言い切れないのだが…。

 

風ノ魔王獣 マガバッサー /遠/怪獣/★★
・移動力:2 ・攻撃/必殺属性:無/風 ・弱点:地
・タンク(回避)&アタッカー ・汎用性:B ・襲撃/防衛適正:D/C

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 回避するたびに攻撃力が2ターンのあいだ中アップ、SPが小アップする固有スキルを持つ。もともと回避率は高めなので発動しやすく、必殺技の追加効果でさらに回避率を大アップできる。早めに倒さないと手が付けられなくなるが、下手に手を出すとパワーアップさせてしまうという、存在するだけで厄介な魔王獣の特性を存分に発揮している。必殺技の範囲は4マスと広く、嵐の如く複数の相手を巻き込める。
 ほぼ確実に攻撃を当ててくるような高難易度クエストの強敵には通用しないものの、プレオープンのアリーナではその面倒さを存分に発揮し、「回避チームは強い」という認識を全ブリーダーに植え付けた。現在は確定反撃持ちをはじめとした天敵の登場に加え、命中が高めのアタッカーが増えたため以前ほど猛威を振るうことはなくなったが、回避型タンクとしては完成された性能であり、1つの到達点と言える。

 

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『異形コレクション』1200編からガチで選ぶマイベスト10

 

 

 マジか。

 マジだ!!!!!!!!!!

 いやもう、本当うれしいね。自分の血肉となっているようなシリーズなので、刊行再開には心の底からワクワクしてるんよね。

 

 『異形コレクション』は、1998年に刊行された文庫本シリーズ。毎巻決められたテーマをもとにホラー・SF・ミステリ・ファンタジー・実験小説といったさまざまな「異形」の作品が集められたオリジナルアンソロジーなんよ。1冊につき5~600ページ、20作前後を収録しているのでなかなかの読み応え。そんな分厚い文庫本のシリーズが既刊48巻も刊行されていて、スピンオフ9巻、別冊1巻、傑作集1巻も含めれば、書き下ろし作品だけで1200編前後の異形作品が掲載されたことになるんやから驚くよね。

 

 『異形コレクション』はとにかく凄かったよね。編纂者の井上雅彦は序文、構成、各作品の紹介において完璧な仕事を見せてくれたし、参加者も名だたる短篇の名手、怪奇のベテランが勢ぞろい。菊地秀行、横田順彌、山田正紀、朝松健、梶尾真治、加門七海、津原泰水、久美沙織、倉阪鬼一郎、篠田真由美、平山夢明、小中千昭、渡辺浩弐、上田早夕里、小林泰三といった豪華メンバーの短編が、2・3ヶ月に1冊のハイペースで読めるんですからアナタ。読書の原体験が星新一で「小説は短ければ短いほど、1冊にたくさん収録されていればいるほど、バラエティに富んでいれば富んでいるほどいい」みたいな短篇至上主義から抜け切れていないおれにとっては至福のシリーズでしたよ。オリジナルアンソロジーは玉石混交と言われるが、各作品のクオリティもかなりのものやったよ。

 というわけで、思い入れ深い『異形コレクション』の中から「私的ベスト作品10」を紹介しようと思うんよね。正直なところ1200編すべてを完全に把握しているわけではないんやけど、「コレすごかったな~!」とパッと思い出せたのだけでも10編や20編じゃ収まらんかったんよね。異形コレクションファンの皆さんのベスト10もマジで知りたい。きっとみんなゲギョゲギョ唸りながら悩むと思う。

 じゃあ、以下順不同で私的ベスト10です。

 

●DECO-CHIN(中島らも/30巻『蒐集家(コレクター)』収録)

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 音楽雑誌記者が出会ったバンド「コレクテッド・フリークス」には、他のバンドとは決定的に違う箇所があった。彼らにしか生み出しえない音楽の魅力にどんどん彼は引き込まれていくのだが…。

 中島らもの遺作なんやけど、氏の小説の持ち味すべてをブチ込んだような奇跡の傑作に仕上がっているんよね。10周年記念の別冊『異形コレクション讀本』で、参加作家に「いちばん心に残っている作品は?」とアンケートする企画があったんやけど、もっとも票を集めたのがこの作品だったんよ。異形のはみだし者たちへの温かい視点、劇中バンドの詞の格好よさに加え、グロテスクと笑い、純愛とトンデモ、様々な要素が混然となった奇想天外としか言えない一編よね。
 中島らもは本作のほか、わりと凡庸な怪談「コルトナの亡霊」(23巻『キネマ・キネマ』収録)、実体験そのまんまとしか思えないアル中小説「頭にゅるにゅる」(24巻『酒の夜語り』収録)を寄稿してます。もっともっと読みたかったよね…。

 

●サラ金から参りました (菊地秀行/12巻『GOD』収録)

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 金融会社の取立人である「おれ」が向かうのは、とある新興宗教団体の本部。3000万耳揃えてキッチリ払ったらんかい! と乗り込むも、建物のなかはもぬけの殻で、信者の服だけが残されていた。なぜ服だけが? なんらかの存在が、彼らの肉体だけを消し去ったとでも言うのか? 馬鹿らしい。おかしな手品でごまかすくらいならさっさと金払ったらんか~い!

 メチャクチャにやばい「神的存在」と、それをまったく意に介してないチンピラとの対比が愉快な1編。神をテーマにしたこの巻『GOD』では、ホラー界隈では有名過ぎるあの神とその眷属もバンバン出てくるんやけど、まさかサラ金と組み合わされるとはな~! 『異形コレクション』ほぼ全巻に寄稿しているレギュラー作家の菊地秀行、さすがの巧者っぷりよね。

 

●3D (町井登志夫/23巻『キネマ・キネマ』収録)

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 首の激痛を訴える主婦が病院に担ぎ込まれる。CTスキャンを撮ることになるが、「フィルム現像機の臭いを気にする」「造影剤に発作を起こす」など、奇妙な点がいくつも見られた。さらに患者の幼い息子は「お母さんの作る料理が急にまずくなり、とても食べられない」と訴える。
 検査結果からはガンであるとも腫瘍であるとも言い切れず、医師たちは患者の首を3D-CTで撮影してみることに。医師たちの目前に映し出された写真は、異様極まるものだった…。
 この巻のテーマは「映画」。この作品にも確かにフィルムもムービーも出てくるんやけど、反則ギリギリの離れ業。町井登志夫の『異形コレクション』寄稿作には、毎回「現代の妖怪」という裏テーマがあるんよね。自身が得意とする医療関係の舞台設定・描写もうまく搦めてあり、さながら「映画・医療・妖怪」の三題噺のような巧みな構成を楽しめるんよ。
 町井氏の『異形』作品の中でも本作はひねくり方が際立っていて、ラストも「なんで“映画”テーマでこんなことになってしまうんだよ!」と叫びたくなるような凄惨さでインパクト大。地獄絵図としか言いようがなく、読んでる方も思わず大喝采のスタンディングオベーションを送るよね。

 


●新鮮なニグ・ジュギペ・グァのソテー。キウイソース掛け (田中啓文/9巻『グランドホテル』収録)

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 そのホテルのフレンチレストランでは、ヴァレンタインデーの夜にのみ提供される特別料理が密かな人気を呼んでいた。味も香りも食感も極上、一口食べれば忘れられないという究極の美味。その料理の材料は、シェフただ1人しか知らないという…。

 6巻『トロピカル』収録の「オヤジノウミ」14巻『世紀末サーカス』収録の「にこやかな男」21巻『マスカレード』収録の「牡蠣喰う客」など、田中啓文の寄稿作品はグチャグチャでゲロゲロな作品ばかりで素敵すぎ! 本作も“ニグ・ジュギペ・グァ”という語感からぼんやりと不穏なものを想像する人もいるかもしれんけど、おめでとう! 正解やね。この世の物ならざる美味な料理と、実際にこの世のものならぬ醜悪なアレ。振り幅広い描写の冴えがすばらしく、グロテスクなのについつい読み進めてしまう喉越しの良さが一流シェフのワザマエなんよ。
 この巻のテーマは文字通りのグランドホテル方式。舞台となるグランドホテルの構造や主要人物・施設名を寄稿者で共有し、とあるヴァレンタインデーの夜を描くという凝った構成やね。いつものテーマ・アンソロジーとはまた異なる味わいを持つ傑作巻で、26巻『夏のグランドホテル』という続編も出ております。

 

●げろめさん (田中哲弥/19巻『夢魔』収録)

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 男はいつしか夜の学校にいた。混濁する意識の中、学校を探索する彼の脳裏に浮かぶのは連絡のつかない妻、そして「げろめさん」なる怪異のことだった…。

 時に甘酸っぱく、時には不快な過去との邂逅。混乱する時間感覚。ありえない構造の建築物。グロテスクな人外の怪物…。悪夢にありがちなモチーフが散りばめられた、要約不能な1篇よね。

 げろめさんはその名の通り、目玉が吐瀉物でできているというオバケ。いくら怪談でもあんまりというか、雑にキモチ悪いビジュアルを持つげろめさんが八面六臂の大活躍! …するかというかそうでもなくて、あくまでげろめさんは主人公の心象を反映させた存在にすぎないというか。そういう幻想的な作品やね。どうもグロい作品ばかり続いている気がするけど、やはりインパクトが強いのと、おれ自身の好みがアレなのでそこは申し訳ないです。
 田中哲弥の『異形』寄稿作ではビジュアルイメージが凄まじい「猿駅」(6巻『トロピカル』収録)、リョナという言葉が生まれる前に書かれたリョナ文学「初恋」(12巻『GOD』収録)が思い出深いし、これらの作品や「げろめさん」も収録された短編集『猿駅/初恋』(早川書房)は傑作揃いの異形短編集なんでぜひ読んで!

 

●ママ・スイート・ママ (安土萌/2巻『侵略!』収録)

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 みよちゃんが幼稚園から帰ると、ママがお菓子になっていました…。
 本シリーズのアンソロジストである井上雅彦は「星新一ショートショート・コンテスト」がデビュー。このコンテスト出身の作家は枚挙にいとまがないんやけど、『異形コレクション』でもコンスタントにショートショートを寄稿していたのが安土萌と江坂遊の2人やね。その作品の水準の高さは初期の「ショートショートの広場」でもひときわ輝いておりました。江坂遊作品は氏の短編集で読むことができるんやけど、寡作の安土萌にはいまだまとまった短編集が無いらしいんよね。ほんと、安土作品を読むには『異形コレクション』を追いかけるくらいしかなかったりする。
 2巻『侵略!』はSFホラーが多く集まった巻やけど、「ママ・スイート・ママ」はその中でもとりわけ奇妙な、それでいてまぎれもなく恐ろしい“侵略”を描いている、一度読んだら忘れられない4ページ作品やね。本当に、どこかで安土萌作品集出してくれないかな…。

 

●魚舟・獣舟 (上田早夕里/36巻『進化論』収録)

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 ほぼすべての大陸が海に沈んだ世界。海上民としての暮らしを捨て、陸上民としての人生を選んだ「私」は、獣舟討伐隊の任務に就いていた。海上民は必ず双子として産まれる。一方はヒトの姿だが、もう一方は魚の形をして産まれてくる。やがて成長したヒトと海へ返された魚は〈操舵者〉と〈舟〉として関係を結ぶが、〈操舵者〉に捨てられた〈舟〉は獣舟へと姿を変え、陸にあがって資源を食い荒らす害獣となる。
 とある満月の夜、私は立ち入り禁止区域に美緒と名乗る海上民が侵入したとの報告を受ける。彼女はかつて、私と同じコロニーで暮らした幼なじみだった。美緒は「獣舟狩りを中止して欲しい」と私に訴える。かつて彼女の朋であった魚が、獣舟となって上陸してくるのだという…。
 一読後、その濃密な世界設定にすっかりやられてしまったんよ…。わずか30ページに収まっているのがとても信じられないレベル。本作の世界観は「オーシャンクロニクルシリーズ」としてその後も展開され、長編作品にも発展しております。その中の1作、『華竜の宮』は日本SF大賞受賞作品やね。
 36巻『進化論』にはSF作品も多く収録されていけど、脳内で容易に再現可能な本作のビジュアルは際立ってたね。水没する高層ビル、一生を船上で暮らす海上民の生活、平成ガメラを思わせるような異形の進化存在、ラストで「私」が思い描く壮大なる外海のイメージ…。ほんと、映画1本観終えたかのような読後感やったね。
 上田早夕里の『異形コレクション』寄稿作品は、単行本『魚舟・獣舟』『夢みる葦笛』(ともに光文社)でまとめて読めます。個人的には38巻『心霊理論』収録の「くさびらの道」も忘れがたいね。「人間に寄生し憑り殺すキノコ」というB級映画のような題材を恐ろしくももの哀しい幽霊譚に仕上げた一編で、これがまたエエんよ。

 

●穴 (高橋葉介/8巻『月の物語』収録)

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 傍らに転がった女の死体をよそに、青年はスコップで穴を掘る。ようやく深い穴を掘り終え、女を埋めて安堵の表情を浮かべる。しかし、ふと横を見るともう1つの死体が…。

 『異形コレクション』には小説だけのアンソロジーやなくて、漫画、絵物語、グラビアなども掲載されとったんよね。本作を描くのは怪奇幻想の大ベテラン・高橋葉介で、漫画ならではのビジュアルイメージがオチに繋がる異形作品やね。
 漫画家の中で『異形コレクション』参加回数がいちばん多いのが高橋さんやね。42巻『幻想探偵』で「夢幻紳士 怪奇編」を寄稿しているほか、20巻『玩具館』27巻『教室』では各作品の扉絵も担当しているんやけど、ただのイラストではなく、それぞれ「玩具」「教室」をテーマにしたヒトコマ漫画として成立しているのが流石よね。ちなみに週刊チャンピオン連載作品『恐怖症博士(ドクター・フォービア)』は、『異形コレクション』の22巻『恐怖症』をヒントに生まれた、という裏話もあります。

 

●ロコ、思うままに (大槻ケンヂ/33巻『オバケヤシキ』収録)

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 少年・ロコが暮らす世界には、人形のフリークスたち、「イエス様」を自称する狂った父親が住まう蝋人形館しか存在していなかった。しかし蝋人形館を訪れた少女・リサと出会ったことで、ロコは新たな衝動に突き動かされる。

 オーケンの小説は軽く平易な文体で書かれていて、パッと見では彼の歌唱力と同じくずいぶんプリミティブであるなあなどと思ってしまうんやけど、これは作中人物ではなく作者自身に感情移入させるためのテクニックやないかと思うんよね。オカルトや電波な人といったはぐれもの(それこそ「異形」と言っていいかもしれない)への「憧れ」と「ひねくれた視線」が両立するオーケン小説は、唯一無二の読書体験をもたらしてくれます。
 「ロコ、思うままに」はオーケンがアーティストとしても第二の全盛期にあった(と個人的に思ってる)ノリノリの時期に書かれた1作で、少々甘ったるさが過ぎる気もするんやけど、本作で描かれる『オバケヤシキ』の定義にはかなりの感銘を受けました。ホラーというジャンルそのものの存在意義と言ってもいい解答かもしれんね。
 ちなみにオーケンの寄稿作のうち、インパクトだけで選ぶなら「龍陳伯著『秘伝・バリツ式携帯護身道』」(35巻『闇電話』収録)やね。“異界や冥界から電話がかかってくる”以外に書きようがない「電話」というある意味難しいテーマに対して、反則と悪ノリで挑んだクソバカ小説。いや。小説じゃないな。なんだこれは。としか言いようがないアレやね。

 

●ミライゾーン (間瀬純子/40巻『未来妖怪』収録)

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 脚本家の高杉敬二は、40年前の特撮ヒーロー番組「ミライゾーン」のリバイバルアニメを担当していた。シナリオの参考にするためテレビ版を撮影した老監督の話を聞く敬二だが、「ミライゾーン」の脚本家はカルト教団に関わっていただの、ミライゾーンは未来から来なかったことにしてほしいだの、胡乱な発言ばかり繰り返す監督に辟易する。
 改めて新作「ミライゾーン」の脚本に取り掛かる敬二。しかし、“未来から来たヒーロー”であるミライゾーンは、いつしか敬二自身の体験を侵食していた。敬二の過去と現実が、ミライゾーンに取り込まれていく…。

 「特撮ヒーローのシナリオと自分の過去がリンクする」という本来ならワクワクするような出来事を、どうしてここまで不穏に描けるのか。おれが無職のころ、ヒマにあかせて品川水族館から東京港野鳥公園へのコンボをキメた日にポカポカ陽気のもとベンチに座りながら読んだ1作なんやけど、なんでそんなことを覚えているかというと、読書体験が異常過ぎてその日のことが脳裏に焼き付いているからなんよね。幻想的というよりは風邪で寝込んだ日の悪い夢のような作品でありながら、文章には鮮烈なリアリティがある。これは白昼夢ではなく、まぎれもない現実であると突き付けられているような感覚に汗が冷えるというか…。解説不能なラストシーンは、ヒーロー番組の単純明快さとは真逆の妖しく深い霧に包まれていて、本当に忘れがたいんよ。
 特撮というネタを扱っておきながら、いわゆるオタク的なくすぐりを一切やっていないのもミソやね。ファン心理とは無縁の視点から描かれた特撮ヒーローの姿は、確かに「未来の妖怪」と呼ぶにふさわしいものかもしれんね。個人的には怪奇小説オールタイムベスト10に入る傑作。

 

 ●花菖蒲 (横田順彌/2巻『侵略!』収録)
 
 最初にベスト10と言ったけど、すまん。ありゃウソやったね。
 横田順彌は古典SF研究家でもあり、実在した明治の冒険小説家・押川春浪についての著作も多いんやけど、『異形コレクション』でも押川春浪が主役のシリーズ作品を寄稿してたんよ。もちろん評伝の類ではなく、春浪とその周辺の人物が語るSF連作集で、明治の時事風俗の描写がメッチャ面白いんよ。この連作をまとめた『押川春浪回想譚』は超オススメ。
 「花菖蒲」は、死期を悟った春浪の「失われた作品」についての奇譚。『押川春浪回想譚』では最終話として収められているだけあって、これがまたなかなか衝撃的な幕切れなんよ。

 

●椰子の実 (飯野文彦/11巻『トロピカル』収録)

 泥酔明けの朝。肌を焼く日差し。神経を苛立たせながら渋谷の街をふらふら歩く主人公は、偶然出会った知り合いから椰子の実を受け取るが…というお話。短いながらも恐怖度ではトップクラスで、かつて「怪奇探偵小説」と言われていた類の雰囲気も備えた一品。むわっとした不快な熱気が漂ってきそう。『トロピカル』収録の話がちょくちょく出てきてるけど、個人的にはかなり好きな巻かもしれんね。

 

●宇宙麺 (とり・みき/15巻『宇宙生物ゾーン』収録)

 宇宙生物がテーマのこの巻、とり・みきが描いたのはラーメン状のエイリアンだった! バカバカしくもグロテスクな笑いで、『異形コレクション』のコミック作品の中でもひときわ印象深い1作やね。

 

●ランチュウの誕生 (牧野修/36巻『進化論』収録)

 すさまじい胸糞ホラーで、品種改良という名のいびつな進化を遂げたランチュウの境遇に、複雑な思いを抱かざるを得ない傑作やね。どうも単行本未収録らしいんやけど、もったいないとしか言えんね。この凄まじい悪意の奔流、もっと人の目に触れるべき邪悪なアレやわ。

 

●苦艾の繭 (吉川良太郎/24巻『酒の夜語り』収録)

 いろいろな「酒」がテーマの巻やけど、本作で取り上げられているのはアブサン(ニガヨモギを使用したリキュール)やね。それをこういう使い方するのかよ! というアイデアだけでもう度肝を抜かれてしまったよね。ハードボイルドな文体もテーマに合っていて雰囲気良し!

 

●フォア・フォーズの素数 (竹本健治/20巻『玩具館』収録)

 『玩具館』は古典的な人形怪談からドリキャスの『シーマン』まで、多彩なおもちゃが勢ぞろいした巻やね。本作で登場するのは「数字」。4つの「4」と4つの記号を使った自然数を作るというパズル遊びのことなんよ。少なくともホラーではない気はするけど、小説としては間違いなく「異形」で、改めて本シリーズの幅の広さというものを思い知らされた1編やね。

 

 本当にキリないからこの辺にしとくね。さっきWikipediaチェックしてたら「そういえばこんなんもあったわ」ってのがバリバリ出てきたけど、いずれちゃんと1200編も読み返したいし、もちろん最新刊の49巻・50巻も含めて改めて評してみたいという気になってきたから…。新刊バリ楽しみやね。あ~~。

 

※この原稿は「二級河川22 怪奇は踊る」収録の原稿に加筆修正したものです。

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胸糞8割・いい話2割のSF恐怖ドラマ『ブラック・ミラー』全ガイド

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 ※初出「二級河川22 怪奇は踊る」 金腐川宴游会 - BOOTH

 

 今回のホラー特集、ぜひ『世にも奇妙な物語』についても取り上げたかったのだが、根本的な問題として「再視聴が難しすぎる」というのもあり断念した。権利関係がアレ過ぎるせいでソフト化はほぼ絶望的、ようつべの違法アップロードで観られるのはまだいい方で(よくないが)、どこにもうpされてないエピソードはうろ覚えで書かざるを得ないので早々に諦めた(個人的には「峠の茶屋」「三人死ぬ」「ロンドンは作られていない」「サブリミナル」「ファナモ」辺りが印象深い)。でもな~。観てェよな~。『世にも奇妙な物語』そのものじゃなくてもいいんだよ、ちょっぴり怖くて少し不穏(SF)で、1話完結でどこからでも観られて、できれば映像も美術も役者の演技もクオリティ高くて、長くても1時間くらいで終わるテレビドラマシリーズをよ…。
 とか思っていたらNETFRIXで見られる「ブラック・ミラー」が完全に条件を満たしていたので良いよ、という話です。これ観たさに契約しちまったけど、“街のビデオ屋さん”的なAmazon Primeとはまた違う“マニアのLD観賞会”みたいな雰囲気があっていいですねネトフリ。いま本当に雰囲気だけで言ったけど。

 

 「ブラック・ミラー」は全世界で何億人が加入しているのか忘れたが、ともかく巨大資本でウッハウッハ言ってるNETFRIXの独占シリーズなんでメチャクチャ金かかってるし、今どきの最新鋭っぽさをすべて取り入れた“未来ガジェット”がどのエピソードにも関わって来るし、それでいて「ブラック」の名に恥じないドチャクソに後味の悪い話が8割なんで最高なんですよね…。最後に正義は勝つみたいなディーン・R・クーンツ的ホラーより、全ては最悪の最悪で終わるジョン・ソール的ホラーを味わいたい日ってあるやん…? ネタバレにならない程度に「胸糞8割・感動2割」くらいの本シリーズ全23話(うち特別編1話)を紹介しまんた。

 

 

【シーズン1】

■国歌 The National Anthem(シーズン1-1・44分)★★★★

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引用:Black Mirror: The National Anthem  Official Trailer  (Netflix)

【あらすじ】

 英国のスザンナ妃が誘拐された。犯人からの要求は16時までに首相が豚とセックスしている映像を全国に向けて放送すること。当然そんな要求は飲めないので「獣姦AV男優の顔を首相と合成する」「犯人の居場所を逆探知し特殊部隊を送り込む」等、あの手この手を尽くす首相だったがすべて空振り、激怒した犯人から切断されたスザンナ妃の指が届けられたことで、同情的だった世論も一変。テロに屈してでもスザンナ妃の命を救わざるを得なくなる流れになってしまう。果たして首相は本当に豚とセックスするのか。そしてその恥ずかしい映像は世界中に流れてしまうのか。この極限状態の中でちゃんとイクことができるのだろうか。

【Review】

 記念すべき第1話にして異色作。近未来的なガジェットは登場しないものの、ある意味史上最悪のテロに巻き込まれた首相とその周囲、そして市井の人々の反応がリアルであっという間に引き込まれる。「せめて放送直前に不快な音波を流しますので!」とか。「ウェー…」とか言って目を背けながらも画面から目が離せない人々とか。このバカげたドタバタ事件の顛末が、こんなラストを迎えるなどと誰が想像出来ようか。

 


■1500万メリット Fifteen Million Merits(シーズン1-2・61分)★★★★★

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引用:Black Mirror: Fifteen Million Merits  Official Trailer (Netflix)

【あらすじ】

 管理化された社会。屋内で単純労働に勤しむ人々に自由はなく、「メリット」と呼ばれる仮想通貨ポイントでアバターを着飾るしか楽しみが無い。この生活から抜け出すにはオーディション番組「ホットショット」で合格し、成功者になるしかなかった。

 兄から遺産を受け継いだ労働者の青年・ビングは、美しい歌声を持つ女性・アビと出会う。「偽りのこの世界では、彼女の歌声こそが本物だ」と感じたビングは、「ホットショット」のエントリー代としてなけなしの1500万メリットをアビに手渡す。心からの感謝を述べるアビ。
 オーディション当日、アビの歌声は視聴者の心を震わせた。舞台横でその様を見つめながら感動にむせび泣くビングだったが、審査員の反応は「素晴らしい歌声だが、それ以上に君は雰囲気がエロいから歌ではなくエロ番組に出演してみては?」という下世話なものだった。観客たちは大興奮、「そうだ! 脱げ!」「脱ーげ! 脱ーげ!」とコールが始まる。

 ビングの中で何かが弾けた。そして…。

【Review】

 空虚な仕事、しょうもない報酬、上辺だけの娯楽…あまりにもわかりやすく戯画化された近未来社会の描写が愉快かつ心冷える。衆愚、体制、社会といった強大な敵に勝ち目のない戦いを挑んだビングが掴んだのは栄光の勝利か、それとも苦い敗北だったのか。観賞後にすべてが嫌になって布団被って寝てしまいたくなる傑作。

 


■人生の軌跡のすべて The Entire History of You(シーズン1-3・48分)★★★

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引用:Black Mirror: The Entire History of You  Official Trailer  (Netflix)

【あらすじ】

 体に埋め込んだチップに、「過去に見た映像」がすべて記録されるようになった未来。人々は自分の記憶映像をビデオのようにいつでも見返したり、他人とシェアできるようになっていた。
 少々神経質な男・リアムは友人らに招かれたパーティで、妻のフィオンが垣間見せた態度が気になっていた。おれが来た時に、彼女から一瞬笑顔が消えなかったか? ジョナスとかいう男に好意的な視線を送っていなかったか? 映像記録をもとにフィオンを問い詰めたところ、ジョナスが妻の元カレだったことがわかった。あんなチャラチャラした、下品な男と妻が付き合っていた…? 過去の映像を繰り返し眺め、妻の反応をつぶさに再度観察するうち、リアムの内にドス黒い感情が渦巻いていく。心中に生まれたある疑問を打ち払うべく、ジョナスの元へ1人向かうリアム。そこで彼が目にしたのは…。

【Review】

 「都合の悪いことは忘れよ!」記憶力の欠如って美徳だよネという思いにさせてくれる一編。こんな未来が実際に訪れたら、この主人公だけでなく世界中のあちこちで似たような事例が起きていそうなものだが…。最新鋭の超テクノロジーがしみったれた家庭紛争の原因になってしまう夢の無いお話ですが、ラスト30秒のハンパない寂寥感がズシンと来る。

 

【シーズン2】


■ずっと側にいて Be Right Back(シーズン2-1・48分)★★★★

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引用:Black Mirror: Be Right Back  Official Trailer  (Netflix)

【あらすじ】

 事故で最愛の恋人・アッシュを失ったマーサ。悲しみに暮れる彼女は、ネット上に残された痕跡を基にして、故人を蘇らせるサービスに登録する。

 アッシュと同じパターンで思考するAIとのテキストチャットに心慰められるマーサ。サービスはさらに精度を増し、電話を介しての会話も可能になる。さらなる“サービス”を求めるマーサの元に届いたのは、アンドロイドとして蘇ったアッシュ。生前の彼と変わらぬ肉体、変わらぬ声、変わらぬ思考、変わらぬ行動パターンを取るアッシュを前にマーサは感動するが、ほどなくして「しょせんAIはAIに過ぎない」ことが露呈してしまい…。

【Review】

 こういう感じの「故人蘇らせサービス」は、わりと遠くないうちに実現しそうな気もする。材料に困らないよう、我々も思想だの画像だの声だのといった痕跡をできるだけネット上に残しておかなければなりませんね。ブログに自撮りや仲間との飲み会写真を載っけたり、社会問題や政治に関してのスタンスを表明しておいたり、クソみたいな「歌ってみた」動画をのそこかしこでバンバンあげとくのも無駄にならないかもしれません。
 夢のような未来技術とそれに伴う問題の数々を同時に描く、すっきりしないラストも含めてSFらしい一作。『ブラック・ミラー』で何度も形を変えて描かれる「AIの人権」について最初に踏み込んだ作品でもある。


■シロクマ  White Bear(シーズン2-2・42分)★★★★

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引用:Black Mirror: White Bear  Official Trailer  (Netflix)

 【あらすじ】

 とある一室で目を覚ましたビクトリア。彼女には一切の記憶が無かった。手がかりは自分の娘らしき女の子の写真、周囲のあちこちで見かける奇妙なマーク、「シロクマ」という単語、それらから想起される不穏なイメージのみ。
 建物を出たビクトリアは、街の人々がスマホを片手に自分を撮影していることを知る。ここはどこなのか、何をしているのか問いかけても彼らはいっさい答えず、にやにやしながら彼女を撮影し続けるばかり。そして奇妙なマークが記されたマスクの男が現れ、銃を片手にビクトリアを追い始める。
 命からがら逃げおおせたビクトリアは、同じく追われる境遇にある女性と出会う。彼女によれば、ある日人々は脳に送られる「シグナル」の影響で思考力を奪われてしまったのだという。一部の人間はその影響を受けにくいのだが、そうした人々を狩る「ハンター」が登場し、シグナル影響下にない人間を殺して回っているのだという。やつらの元から脱出するには、この周囲にシグナルを発信しているホワイトベア放送局を襲撃し、破壊するしかないらしい。
 決死の覚悟でホワイトベア放送局へと向かうビクトリアたち。だがビクトリアの脳裏には、不穏なイメージ映像が再三繰り返されていた。

【Review】

 「なんにでもスマホカメラを向けたがる人々」を傍から見たとき、あるいは実際カメラを向けられたときに感じる彼らのブキミさを分かりやすく揶揄した作品。…と思いきや、もう一段階レイヤーの深い社会病理に踏み込んでいることがラストで判明する。「それ」の恐ろしさは『ブラック・ミラー』では何度も取り上げられており、シリーズ共通のテーマなのかもしれない。アクションアドベンチャー風味の展開が終盤でガラっと様変わりするのも見事。個人的には本作みたいな見世物はまったく見たいと思わないが(わざわざ現場まで行きたいか? コレ)、こういうのがもてはやされていること自体が暗黒の未来っぽくもある。


■時のクマ、ウォルドー The Waldo Moment(シーズン2-3・43分)★★★★

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引用:Black Mirror: The Waldo Moment Official Trailer  (Netflix)

【あらすじ】

 バラエティ番組で人気の青いクマ・ウォルドーは、有名人にも容赦なく過激で下品な言動で突っかかっていく芸風で人気のアニメキャラ。そんなウォルドーの次のターゲットは、保守党のモンロー議員。モンローを徹底的にからかい、いじり倒し、選挙活動中の彼の元へわざわざ街頭トラックで駆けつけて挑発するなど、あらゆる手段でこき下ろしていた。
 一方でウォルドーの「中の人」、ジェイミーは苦悩していた。ただただ下品で、ポリシーも無く著名人に噛み付くだけのウォルドーにはジェイミー自身も辟易していたが、いざ本番となると完全にウォルドーになりきってしまう自分にも嫌気が差していた。そんな中、テレビ局は「モンローの選挙にウォルドーを出馬させよう!」とさらに過激なキャンペーンを打ち出す。当然反対するジェイミーだが「ウォルドーは君だけのものではない」とプロデューサーからわりとまっとうに反論され、政治出馬は決定的なものに。
 そして、モンローとウォルドーの公開対談。モンローからは「キミはアニメの後ろに隠れているだけの卑怯者」とののしられた挙句、自分の本名や過去の(ぱっとしない)俳優歴などをバラされてしまいジェイミーは激怒、政治に対しての本心からの思いをモンローに対してぶつけまくる。この対談はネット上でも大いに話題を呼び、ウォルドー人気はさらに上がってしまう…。

【Review】
 本作から感じられる危惧感は世界共通のものなのだろう。大衆の代弁者、強者へのカウンターとして人気を博していたウォルドーが、いつしか体制側に取り込まれていく過程が「いかにも」な感じで寒々しい気分にさせてくれる。ウォルドーは人々が思う以上に圧倒的な強者なんだけど、それを演じるジェイミーはどこまでも弱く等身大だ。

 


■ホワイト・クリスマス White Christmas(シーズン2-4・73分)★★★★★

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引用:Black Mirror: White Christmas  Official Trailer  (Netflix)

【あらすじ】

 雪が降るクリスマス。とある山小屋で2人の男性が語る、3つの物語からなるオムニバス。
 1話目。視覚を他人と共有できるデバイス「Zアイ」を利用して、リアルタイムでアドバイスする恋愛コンサルタントの話。ベッドイン後の映像も含め、Zアイで会員たち全員で見て楽しむというゲスさ満載の仕事だったが、そんな彼らが共有することになった悪夢の一夜とは…。
 2話目。人間の人格を外部デバイスにコピーできるようになった時代。以前の記憶を引き継ぎつつも、肉体を持たないコピー人格はかなりの混乱と恐怖を感じる。そんなコピー人格専門のカウンセラーを職業とする男がいた。その仕事の実態とは…。
 3話目。一般的に普及しているZアイにはブロック機能も搭載されていた。別れた妻にブロックされてしまったとある男は、彼女のみならず自分の娘の姿さえも見られなくなってしまう。元妻が不慮の事故で死亡した後、ようやくブロックが解除された彼は娘に会いに行くが…。

【Review】

 一見、無関係にも思える3つのエピソードがラストで収束。白き聖夜を黒く染める陰鬱なスペシャル回。
 これまでのエピソードと比べ、特にSFホラーっぽさが強く感じられる。突如遭遇する狂気(第1話)、無限の無間に落とされる絶望感(第2話)、断絶“される側”の苦悩(第3話)などなど…。いずれのエピソードでも、平穏な日常を送っていたはずの人々の生活が一転、ブラックな世界に放り込まれる。観賞後は「うまいこと伏線回収しましたな~!」という感心と同時に、救いの無さ過ぎる展開に心冷える思い。

 

【シーズン3】


■ランク社会 Nosedive(シーズン3-1・63分)★★★★★

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引用:Black Mirror: Nosedive  Official Trailer  (Netflix)

【あらすじ】

 SNSがさらに一般的になった社会。例え初対面の相手でも「評価」できるようになったため、この社会では「いいね!」評価がすべてだった。一定ランク以上の「いいね!」が無い人間は出世も出来ず、高級住宅にも住めず、飛行機にすら乗れないのだ。
 いまいちランクが伸び悩んでいるレイシー。「いいね!」専門のアドバイザーに助言を受けたり、アルファな同僚に媚びを売ったりと自分なりに努力はしているものの、成果は芳しくない。そんな彼女に訪れた一世一代のチャンスが、上流階級な面々が集まる結婚式での友人代表スピーチ。これで泣けるエピソードをでっちあげれば★もガッポガッポやでぇ! と張り切るレイシーだが、式場に向かう道中でささいなミスから低評価を押されまくり、ランクがどんどん下がっていってしまう。この評価じゃ交通機関を使うこともできない! どうすりゃいいの~!?

【Review】

 シリーズ中もっともギャグに振り切れた作品。「いいね!」欲しさに傍から見れば奇行でしかないアレコレに取っ組み、努力してるにも関わらずパッとしないままアルファ連中に小馬鹿にされるレイシー。涙と笑いを禁じ得ないとはこのこと。
 「SNSはクソ! もっと、なんかこう…‟人と人との生身のお付き合い”のほうが大切なんじゃない!?」という主張は今更な気もするが、実際にSNSはクソクソのカスゴミのゲボなんで仕方ないですよね。最後はまあバッドエンドなのだが、ある意味痛快でもあり、一筋の希望も感じさせる。


■拡張現実ゲーム Playtest(シーズン3-2・57分)★★★

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引用:Black Mirror: Playtest  Official Trailer  (Netflix)

【あらすじ】

 家を飛び出し、世界中をヒッチハイクでフラフラしていたクーパー君だったが、ロンドンでついに金が尽きてしまう。現地でひっかけたゲーム好きの女性・ソーニャの勧めもあって、新進気鋭のゲームクリエイター・サイトウが手がける新作ゲームのテストプレイヤーをすることに。ついでにソーニャからは「こっそり新作の写真を撮ってきてよ! ただのテストプレイより儲かるから」と頼まれる。
 バイト当日、クーパーがテストプレイすることになったのは最新型の現実拡張ゲーム。脊髄に小さなユニットを埋め込むことで、ゲーム内のキャラクターが実際にその場にいるかのように視覚・聴覚で感じられるものだった。職員の目を盗んで、こっそりスマホでゲームデバイスを撮影するクーパーだったが、その姿は監視カメラに捉えられていた。
 いくつかのデモンストレーションのあと、クーパーはサイトウと面会し、この技術を応用したホラーゲームのテストをしてくれないかと依頼される。現実拡張デバイスに加え、使用者の過去の記憶を読み取ることで、もっとも恐ろしい体験ができるのだという。依頼を引き受けたクーパーは古びた洋館に連れて行かれ、ギブアップするまでそこで過ごすことになる。そして…。

【Review】

 『ブラック・ミラー』にしては珍しい直球ホラー演出が楽しい1作。話の展開は少々強引でオチも無理やりなのだが、クーパーの感じる恐怖の源流にある体験が非常にリアル。作中に何度も出てくる「母」の不穏さと来たら! 余談だが、ソーニャの家に並んでいるゲームソフトがなかなか通なラインナップだった。

 


■秘密 Shut Up and Dance(シーズン3-3・52分)★★★★★

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引用:Black Mirror: Shut Up and Dance Official Trailer  (Netflix)

【あらすじ】

 PCがウイルスに感染していることに気づかず、うっかりシコってしまったケニー君は、「ウェブカメラで今の恥ずかしい姿を録画させてもらった、バラされたくなければ指示に従え」というメールが届いて大慌て。「時間内にこの場所まで行け」「メッセンジャーから荷物を受け取れ」「荷物をホテルの○○号室まで届けろ」と、指示のままにあれこれ働かされることになる。だが、その内容はどんどんエスカレートしていき…。

【Review】

 筋立て自体はシンプルで、なんなら似たような話がすでにあってもおかしくないくらいだが、込められた悪意の量と質がハンパない。作中ではケニーのほかにも多くの人々が「黙って踊ら」されていることが分かる。謎のメールの送り主の正体とその目的については一切語られないのだが、視聴者には容易に想像できる。まさに吐き気を催されるほどのアレ。死よりもなお悪い最悪。ウェブカメラハッキングは普通にありえる事例なので気を付けましょう。

 


■サン・ジュニペロ San Junipero(シーズン3-4・61分)★★★★★★

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引用:Black Mirror: San Junipero  Official Trailer  (Netflix)

【あらすじ】

 1987年のサン・ジュニペロ。青い海が広がるこのリゾート地で、地味なメガネっ娘・ヨーキーはナウいイケイケギャルのケリーと出会う。ケリーからレズセックスを持ちかけられるヨーキーだが、婚約者がいることを話し、その場は別れることにした。
 1週間後、サン・ジュニペロの街。目いっぱいのおしゃれをしてディスコを訪れたヨーキーは再びケリーと出会う。彼女の家でレズセックス後、お互いの境遇を語り合い、ケリーにはかつて夫がいたことを知るのだった。
 数週間後、1996年のサン・ジュニペロ。あの日以降、ケリーは姿をくらましてしまう。思い出のディスコや、危険な雰囲気漂う退廃的なクラブなど、ケリーのいそうな場所を渡り歩くヨーキーだったが、足取りはつかめなかった。
 1週間後、2002年のサン・ジュニペロ。ようやくケリーと出会えたヨーキーは彼女の不義理をなじるものの、「借りなんて無い」とつれない程度を取られる。だがその後、お互いの素直な気持ちを語り合い、この街を出て本当の姿で出会う約束をするのだった。

【Review】

 むせかえる濃厚百合。サン・ジュニペロの街に隠された秘密については中盤で明らかになるのだが、話の本筋はそこには無い。偽りの世界の、偽りの姿で真実を掴んだ2人の物語。サン・ジュニペロの海、とあるシーンではそのシチュエーションも相まって、まさに別世界の如き美しさを見せてくれる。その後の胸が痛む一幕も含め、とにかく感情を左右に揺さぶられる一品。SF史に残る傑作。

 


■虫けら掃討作戦 Men Against Fire(シーズン3-5・60分)★★★

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引用:Black Mirror: Men Against Fire  Official Trailer  (Netflix)

【あらすじ】

 人間と同等の姿と知能を持ちつつも、凶暴にて醜悪なる敵対存在、その名も「虫けら」たちが跋扈する近未来。虫けら掃討部隊に志願した新兵、ストライプは初戦でみごと虫けら2匹をブチ殺したが、とある機械の光を浴びたことで心身に変調をきたす。憎むべき虫けらどもが「人間」と変わりない姿に見えてしまうのだ…。

【Review】

  ここまで素直というかストレートというか、オチが完全に予想できる話も「ブラック・ミラー」では逆に珍しい。とは言え決してチープな出来ではなく、バッドエンドとも言い切れないラストの1カットには単なるやるせなさ以外の感情がいろいろと渦巻く。本作は意外な展開や衝撃の事実に驚くような話ではなく、作り込まれた世界観と、ガジェットを駆使した「虫けら掃討戦」のディテールを楽しむ回だと思う。


■殺意の追跡 Hated in the Nation(シーズン3-6・89分)★★★★

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引用:Black Mirror: Hated in the Nation  Official Trailer  (Netflix)

【あらすじ】

 有名人・著名人の殺人事件が多発。明らかに他殺なのだが、その凶器や手口は不明のまま。事件を調査するカリン警部は、犠牲者たちが「アイツ死ねばいいのに」とネット上でヘイトを買い続けていたことを突き止める。果たして事件の首謀者は? 凶器の正体は? そして犯行の動機とは…?

【Review】

  推理モノの色濃いエピソードなので、あらすじは少々簡潔に済ませる。ネットでは「あいつ死なねえかな~!」以外の感想を抱かせてくれないようなドブゲロのアホバカが何匹もいるが、そいつらを本当にぶっ殺せる力を得たらあなたどうしますか。ネットでしか接点の無い見知らぬ他人、場合によってはこちらの存在すら認識していない相手。そんな連中に対して殺意を抱くハードルは、とてつもなく低いのではないかという、わりと痛いところというかネット社会ならではの病理を突いてくる。腹立たしいボケナスはブロックするのがいちばん!

 

【シーズン4】


■宇宙船カリスター号 USS Callister(シーズン4-1・76分)★★★★

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引用:Black Mirror: USS Callister  Official Trailer  (Netflix)

【あらすじ】

 宇宙が舞台の超人気オンラインゲーム「インフィニティ」運営会社のCTO、デイリーはうだつの上がらない日々を過ごしていた。かつては天才的なゲーム開発者であった彼だが現在はただのお飾りでしかなく、社員たちにもナメられっぱなし。
 そんな彼の憂さ晴らしは、インフィニティの世界で密かに作り上げた「カリスター号」で過ごす毎日。強くて賢くてモテモテの超スゴい船長のロバート・デイリーとそのクルー達が、銀河を駆ける超スゴい宇宙船・カリスター号で宇宙の平和のために大活躍! 自分以外のクルーや悪役といった登場人物たちは、ムカつく社員のDNAをこっそり採取しクローン人格として再生したもの。クローン元の人物とまったく同じ記憶、本人と変わらない人格を持つ彼らを相手に、デイリーはあらゆる欲求と欲望を果たすことができるのだ。
 現実での生活に不満が溜まるほど、ゲーム内のデイリーの行動はエスカレートしていく。もはや暴君でしかないデイリー船長に対し、カリスター号のクルーたちは反逆を試みるが…。

【Review】

  記憶・人格のコピーによって生まれたデジタルクローンは『ブラック・ミラー』ではわりとよく出てくるガジェットだが、「ホワイト・クリスマス」然り「ブラック・ミュージアム」然り、彼らの多くは永遠の不自由と絶望に囚われている。だからこそ、そんなデジタルクローンたちが現実に反旗を翻す本作は非常に痛快かつ爽快。
 最初の印象では「冴えないかわいそうなオタク」でしかなかったデイリーが、話が進むにしたがって悪魔のごとき暴虐な神へと化していく過程には少々つらいものもある。ただ真面目な話、未来ではクローンにも人権は認められるだろうし、弱者をいたぶる弱者という構造を抜きにしても彼は裁かれるべき人間だったのだろう。


■アークエンジェル Arkangel(シーズン4-2・52分)★★★★

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引用:Black Mirror: Arkangel  Official Trailer  (Netflix)

【あらすじ】

 一人娘のサラのことが心配で心配でたまらない母親・マリーは、娘の動向をすべてチェックできる新サービス「アークエンジェル」に加入する。埋め込んだチップを介してサラの居場所を常に把握できるし、彼女が見ているモノをタブレットですべて確認できる。しかも、娘にストレスを感じさせるような怖いモノ、痛いモノ、醜悪なモノは「ブロック」することで、娘の視界に入らないようにすることまでできてしまうのだ。アークエンジェルのおかげで心の平穏を取り戻したマリーだが、マリーの父親が発作を起こして倒れる。苦しむ姿を見たサラはストレスを感じ、倒れた祖父の姿はブロックされてしまう。
 アークエンジェルの歪さを知ったマリーはタブレットを破棄し、サラもすくすくと育っていった。とは言え年頃の娘、親の言いつけを守らずに帰りが遅くなることもある。心配のあまりアークエンジェルを再起動するマリー。すると、そこにはあられもない姿の男の裸体が映し出されて…。

【Review】

  監督は女優のジョディ・フォスター。親のエゴイズムが子供を歪めてしまいかねないという、わかりやすい教訓たっぷりのお話…とはいえ、本作のマリーの行動を真正面から咎め立てできる親はそういないのではないか。だってそうやん…。一人娘がハロウィンで軽トラひっくり返しそうなウェイ系と付き合ってたら一言二言はモノ申したくなるのは普通やん…。
 説教オブ説教のために作られたガジェット感が漂うものの、さりげない描写の巧みさにうならされる一品。物語上は脇役でしかないマリーの父親の存在感や、サラが成長してくカメラワークには感心する。バッドエンドでありながら前向きで解放感のあるラストは「ランク社会」に通じるものもある。


■クロコダイル Crocodile(シーズン4-3・59分)★★★

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引用:Black Mirror: Crocodile Official Trailer  (Netflix)

【あらすじ】

 名のある建築家として成功したミアだが、彼女には誰にも言えない殺人の秘密があった。ミアが偶然目撃した事故を調査するため、保険会社の調査員が彼女のもとを訪れる。過去の視覚映像を再現する「リコーラー」によって殺人が発覚することを恐れたミアは調査員も殺害してしまう…。

【Review】

  視覚情報を記録できるという、「ブラック・ミラー」ではおなじみ…というか、少々手アカが付きすぎた感のある装置がメインのガジェットに据えられている「またかよ」感と、いくらなんでも救いが無さ過ぎるうえに強引な感じが拭えないラストのせいか、いまいち絶賛しにくい一作。ラストの雰囲気は実にイイんだが、ここにポイント注ぎ過ぎな気もする。全体に漂う徹底した寒々しさは本当に素晴らしい。


■HANG THE DJ Hang the DJ(シーズン4-4・51分)★★★★★

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引用:Black Mirror: Hang the DJ Official Trailer  (Netflix)

【あらすじ】

 男女交際のすべてがシステムによって管理されている世界。交際相手も交際期間もすべてシステムによって定められ、数々のデータを集計したのちに理想のパートナーが決められる仕組みだ。違反した者は「壁」の外に追放されるという、厳しい掟でもある。
 システムによって出会ったフランクとエイミーは、初対面の時からお互いに惹かれるを感じていた。しかしシステムから提示された交際期間はたったの36時間。名残惜しさを感じつつも2人は別れ、システムに命じられるまま別の相手との交際を始める。しかし明らかに相性の合わない女と1年間交際することになったフランク、幾多の男と出会いつつも物足りなさを感じていたエイミーは、お互いのことを忘れられずにいた。
 偶然なのか必然なのか、フランクとエイミーは再びシステムによって再会する。あえて残された交際期間を確認しないことを誓い、至福の時間を過ごす2人だったが…。

【Review】

  常にユーモアと相手への気遣いを忘れず、人当たりのいいフランクとエイミーが好意的に描かれているぶん、ディストピアにしか思えない恋人指名システム、「壁に覆われた世界」というお決まりのガジェットの不穏さは相当なもの。この流れでこのラストに落ち着き、観賞後にこんな気持ちになるというのは見事としかいいようがない。

 


■メタルヘッド Metalhead(シーズン4-5・41分)★★★

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引用:Black Mirror: Metalhead  Official Trailer  (Netflix)

【あらすじ】

 おそらくは文明崩壊後の世界。ベラ、クラーク、アンソニーの3人は「とある物資」を求めて倉庫に侵入するが、自立型の殺人マシン・「ドッグ」の襲撃を受ける。クラークとアンソニーは頭を吹き飛ばされて即死、ベラは命からがら逃げ出すが、地獄の猟犬はどこまでも彼女を追い詰め…。

【Review】

  ストーリーの妙ではなく、シチュエーションとビジュアルで魅せる回なので、賛否両論になるのもわかる気はする。全編モノクロでBGMは最小限というスタイリッシュが過ぎる映像、モノクロなのをいいことにけっこう過激な肉体破損描写、まったく説明されない世界観…。要は「倉庫に潜入して●●を取ってこい」という『フォールアウト』のクエストみたいな単純なお話ながら、妙に視聴者に要求するハードルが高い問題作。狂ったアイボというか殺人メカゴキブリというか、とにかく絶妙な造形のドッグ=メタルヘッドの不気味さとカッコよさが印象的。5、6体くらい買ってオンラインサロンのオフ会やってる会場に放り込みたい。

 


■ブラック・ミュージアム Black Museum(シーズン4-6・69分)★★★★

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引用:Black Mirror: Black Museum Official Trailer  (Netflix)

【あらすじ】

 ニッシュが立ち寄った「ブラック・ミュージアム」には、さまざまな犯罪に関する展示物が陳列されていた。館長のロロ・ヘインズと名乗る男性は、展示物にまつわる3つの奇妙なエピソードに語る。
 患者の痛みを共有することで、正確な診断ができるようになった医者の話。事故で植物人間になった妻の意識を、自らの脳に移植した男の話。死後も人格を電子的に再現され、永遠に死の瞬間を見世物にされ続けることになった死刑囚の話。
 自慢の品々を得意げに披露するロロ・ヘインズだが、実は彼こそが人の「意識」を移植する技術の持ち主だった。そして最後のエピソードが語られたあと、彼とニッシュに関わる意外な事実が明らかになる。

【Review】

 「ブラック・ミラー」の様々なエピソードにまつわるイースターエッグも大量に仕込まれた、シリーズの集大成的な作品。「ホワイト・クリスマス」のようなオムニバス構造で、「永遠に続く苦痛」という似たようなテーマのエピソードもあったりする。正直「もう見た」感がなくもないのだが、えげつなさという点では本エピソードのほうが大幅にアップしているし、前述の小ネタの数々も楽しい。

 

【シーズン5】


■ストライキング・ヴァイパーズ Striking Vipers(シーズン5-1・61分)★★★★

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引用:Black Mirror: Striking Vipers  Official Trailer  (Netflix)

【あらすじ】

 ダニーとカールは、かつてシェアハウスで暮らしていた旧知の仲。ダニーが妻子持ちになってからは長らく会っていなかったが、38歳のバースデーで2人は久々に再会。カールは昔いっしょにプレイしていた対戦格闘ゲーム「ストライキング・ヴァイパーズ」の最新作をダニーにプレゼントし、「今度ネット対戦しようぜ!」ということになった。
 「ストライキング・ヴァイパーズX」は最新鋭のVRゲームで、操作キャラクターの五感がプレイヤーにそのまま反映されるという。ダニーは男キャラ、カールは女キャラでプレイしていたが、激しい戦いを重ねているうちにだんだん別の意味で盛り上がってきてしまい、VRセックスをおっ始めた。あまりの気持ちよさにすっかり夢中になってしまった2人は夜な夜な「対戦」を繰り広げていたが、そのおかげで妻や恋人との仲がこじれてきてしまう。
 おれたちはいったい何をやってるんだ? ちょっと過激なバーチャルプレイか? それともただのホモ不倫なのか? お互いに抱いている感情は友情以上の…なんなんだ?

【Review】

  ネット上の付き合いと現実との付き合いは別物とは言われるが、ここまで極端な例はスゴい。こんな奇妙な三角関係、SFでしかお目にかかれないのでは? 実際にこんなリアル過ぎるゲームがあったら、発売1週間も経たずにメンテが入ってなんらかの機能制限が付きそうなものだが(「ジャンプ後の硬直を軽減しました」等に加えて「性的快感を得られないように調整しました」みたいに)、エロ目的に使ってるの彼らしかいなかったんですかね?

 


■待つ男 Smithereens(シーズン5-2・70分)★★★★

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引用:Black Mirror: Smithereens  Official Trailer  (Netflix)

【あらすじ】

 2018年・ロンドン。タクシー運転手のクリスは、SNSを運営するスミザリン社の社員を誘拐。「社長のビリー・バウアーと話をさせろ!」と突き付ける。そんな要求は簡単には飲めないとするスミザリン社だったが、狙撃も交渉もうまくいかず、状況は硬直。事件を知ったビリー・バウアーは、クリスとの対話を試みるが…。

【Review】

  とある誘拐事件と、それを取り巻く周囲…クリスと人質、警察、狙撃手、交渉人、FBI、スミザリンの幹部、そしてビリーといった人々の行動と対応が非常にていねいに描かれており、実録風犯罪サスペンスとしての見ごたえはじゅうぶん。事件のきっかけになった事故に加え、「警察以上の情報収集能力を見せるSNS運営」「なにげない漏洩がSNSを通じて拡散し、犯人のもとへ届いてしまう」等の“社会の闇”パートはオマケに過ぎない。ストーリー自体はツイッターにアップされる啓蒙4コマみたいなものなのだが、「身の覚え」がある人は多いだろう。「近未来に起きるかもしれない事件」ではなく、「すでにもう何度も起きている事件」について描いた異色作。

 


■アシュリー・トゥー Rachel, Jack and Ashley Too(シーズン5-3・67分)★★★★★

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引用:Black Mirror: Rachel, Jack and Ashley Too Official Trailer  (Netflix)

【あらすじ】

 孤独な少女、レイチェルは今をときめくアーティストのアシュリーに夢中。誕生日にはアシュリーの思考パターンをコピーした小型ロボットフレンド「アシュリー・トゥー」をパパに買ってもらった。姉のジャックは「がんばれば夢は叶う~♪」みたいなアシュリーのカラッポな歌詞を小馬鹿にしていたが、レイチェルのアシュリー熱は冷めることがない。
 一方で、当のアシュリー本人はマネージャーに強要された自らのキャラクターに思い悩み、スランプに陥っていた。言うことを聞かないアシュリーに対しマネージャーはついに強硬手段を決行、アシュリーを薬物で意識不明の状態にし、昏睡中の彼女をホログラムで再生した「アシュリー・エターナル」を新機軸のアイドルをして売り出そうとする
 そんな折、壊れたアシュリー・トゥーをパパの研究室で修理したレイチェルとジャックは、うっかりアシュリー・トゥーの自我を目覚めさせてしまう。「本物のアシュリーだ」と感動するレイチェルに、アシュリー・トゥーは「あのクソマネージャーをやっつけるため協力して!」と叫ぶ。レイチェル、ジャック、アシュリー・トゥー、3人娘によるアシュリー奪還作戦の始まりだ!

【Review】
 漫画チックなキャラクター、涙あり笑いありアクションありの特濃展開、さわやかな後味など、エンターテイメントとしての完成度はすばらしく、藤子不二雄的なジュブナイルの世界に存分に浸ることができる。「面白いっちゃあ面白いけど『ブラック・ミラー』ってこんなんだっけ?」という違和感も大きく、シリーズの転換期を感じさせる1品。

 

【特別編】

 

■ブラック・ミラー: バンダースナッチ Black Mirror: Bandersnatch(90分)★★★★

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引用:Black Mirror: Bandersnatch Official Trailer  (Netflix)

 【あらすじ】

 1984年。若きプログラマーのステファンは、ファンタジー小説、『バンダースナッチ』を原作にしたアドベンチャーゲームを制作していた。『バンダースナッチ』は読者が展開を選べるというゲームブックのような仕掛けがあり、アドベンチャーとの相性はぴったり。デモ版が完成し、尊敬するクリエイターのコリンが所属するプロダクション、タッカー社に持ち込んでみたところ好評価を得ることができた。完成すれば社を挙げて大々的に売り出してくれるという。
 大きなチャンスを得たステファンは根を詰めてゲーム制作に取り掛かるが、バグが頻出したりコンピューターにお茶をかけたりしていたのでなかなか完成までたどり着かない。ノイローゼ気味のステファンは「自分の行動が第三者によって選択されている」という奇妙な感覚を覚えるようになる。

【Review】

 視聴者がステファンの行動を選択肢で選べるという、それこそアドベンチャーゲームのような実験作。朝食にどっちのシリアルを食べるか、コンピューターにお茶をかける・かけないかだのといったものから、人の生死にかかわる重大な選択まで、すべては視聴者の手に委ねられている。
 本作においては「おれが見た展開」と「あなたが見た展開」が異なることが容易に予測できるので、感想を述べづらい。「ループものって怖くね?」とはよく言われるが、作中人物よりも視聴者のほうがその渦中に巻き込まれる不安感を味わうことになるとは…。果てしないループの中で、作中人物がすでに語っていた「残酷な現実」に気づいた時のやるせなさと来たら。
 尖りすぎた所ジョージみたいなコリンを始め、登場人物の個性は抜群。「シロクマ」「メタルヘッド」「サン・ジュニペロ」等の楽屋ネタも見どころで、スペシャルエピソードにふさわしい物語とギミック。

 

 

 

 以上です。

 ホント出来の差こそ多少はあるけど、それぞれに違った味わいとアイデアが詰まっているので全話観てほしい。あえてオススメを選ぶなら、エンターテインメント重視で面白い話が観たいなら「サン・ジュニペロ」「アシュリー・トゥー」「ランク社会」の3本。胸クソゲロゲロ展開が好きなら「国歌」「秘密」「ホワイト・クリスマス」辺り。ちなみに海外の評価サイト、インターネット・ムービー・データベース(IMDb)で高評価だったエピソードベスト4は「ホワイト・クリスマス」(★9.2)、「HANG THE DJ」(★8.8)、「サン・ジュニペロ」「ブラック・ミュージアム」(★8.7)でした。まあ1日1作見ればネトフリの初月無料期間でもコンプリートできると思うので、今の世界情勢よりも沈鬱な気分になる未来世界に存分に浸ってほしい。


 あとネトフリ、ホラー系だけでも傑作がいろいろ観られるのが良い。ベタなところでは現在進行形で大人気のSFホラードラマシリーズ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』、スティーヴン・キングとその息子のジョー・ヒルが原作の『イン・ザ・トール・グラス -狂気の迷路-』、同じくキング原作の『1922』、韓国製の傑作ゾンビ映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』、その前日譚の『ソウル・ステーション パンデミック』、1年に1日だけ殺人が合法になる日に起きる事件を描く『パージ』、その3作目『パージ:大統領令』(なぜか2作目は無い)、POVホラーの佳作『グレイヴ・エンカウンターズ』と『グレイヴ・エンカウンターズ2』、全裸のおっさん怪人のビジュアルが普通に怖い『テリファイド』、さらにベタベタなところでは『ヘルレイザー』『キャビン』『フライトナイト』『リトルショップ・オブ・ホラーズ』『ホステル』『ファイナルデッドコースター』『ワールド・ウォーZ』辺りも観られるので観ましょう。観れ。(おわり)

 


 

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 BOOTHで通信販売中のサークル誌「二級河川22 怪奇は踊る」では、上記の『ブラック・ミラー』レビューの他、光原伸のジャンプ漫画『アウターゾーン』評、クライヴ・バーカーの幻想スプラッタホラー短編集『血の本』全話解説、伝説のホラーアンソロジー「異形コレクション」傑作10選といったホラー系レビューに加え、「お好みの怪奇をお届け!ホラー映画ソムリエ対決」「素人が百物語してみたら下ネタ多めだった件」等の不要不急の極みとしか言えない企画を掲載しております。2時間程度のヒマつぶしを保証!

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