ジャッカルの日

漫画・ゲーム・映画・怪奇についてバカが感想と考察を書く

【2019】よかったゲーム10選&トホホ3選【将太の寿司】

 今年発売したものではなく、おれ個人が今年遊んだヤツから「よかったゲーム」を選びまんた。ハードは自分が遊んだ機種のもの。また、あまりゲームに詳しくない人のために各ゲームタイトルを『将太の寿司』の登場人物に例えてわかりやすくしてあります。

 

1.スーパーマリオメーカー2

(任天堂/Switch)

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 マリオのステージを作って遊べるアレの第2弾。空中ゲッソーとかチクワブロックとかガボンとかを配置しているだけで1日が過ぎる。ちなみに上の画像のような「クッパを倒さないと先に進めないので、救済として無限にファイアフラワーが出てくるようにした」コースはクソだと思います。本作からはバトルモードも導入され、粗削りだが「横スクロールマリオで対戦プレイ」という概念自体が新鮮だった。2作目にしていまだ残された課題は多いが、永遠に遊べるゲームなのは間違いない。本作が売れれば売れるほど、盛り上がれば盛り上がるほど面白いコースに出会う確率が減るうえ、自分のコースを遊んでもらう機会が減るというのはすさまじいジレンマというかなんというか。『将太の寿司』で例えれば切島傀なみに「不安定だが総合点は高い」実力派である。

 

2.ペルソナ5

(アトラス/PS4)

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 PS4と同時購入し、最初のダンジョンで中断して数年ほったらかしにしていたのを改めてプレイ。「RPGの最適解ではないか?」と思うまでに感動した。これを周回できる学生がうらやましい。『将太の寿司』で例えれば全国大会編の佐治安人くらいパーヘクトな大物と言える。


3.Fallout4

(ベセスダ・ソフトワークス/PS4)

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 発売時はXbox one版を購入したものの、ラスト直前で致命的なバグが起きたのでほったらかしにしていたのを改めてプレイ。「ヌカ・ワールド」は領地に攻め入るのがイヤで中断したがそれ以外のDLCはおおよそクリア。やっぱそんじょそこらのオープンワールド(『Fallout76』含む)とは格が違うなあとの思いを新たにした。『将太の寿司』で例えればマグロ哲くらいのベテランの風格がある。

 

4.ポケットモンスター ソード

(ポケモン/Switch)

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 発売前の悪評の嵐はどこへやら。ポケモンバトルを「スポーツ」として描いたシナリオは終盤のデタラメぶりさえ除けば新鮮かつ高品質。ヌル過ぎるダンジョン、一部ポケモンの悪夢のような厳選難度、通信要素の劣化などイマイチな部分も多いが、「ポケモンのいる世界」という雰囲気づくりは極上。個人的には歴代シリーズ作品の中でも3位か4位くらいに入る。なんだかんだで『将太の寿司』で例えれば大年寺三郎太レベルの実力者なのは間違いない。

 

5.ウルトラ怪獣バトルブリーダーズ

(バンダイナムコゲームズ/iOS)

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 今年の当ブログの更新のうち、半分くらい本作関連の記事だった。怪獣を育てる戦略シミュレーションという、今までありそうでなかった題材に対し本気で取り組んでくれたスタッフには感謝しかない。『将太の寿司』で例えれば、戦績はパッとしないが細やかな技術と心配りが光る奥万倉くんみたいな立ち位置。

 

6:けものフレンズ3

(セガ/iOS)

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 『2』の地獄絵図っぷりはどこへやら、ワクワクとほのぼのが同居する見事なメインストーリー。渋すぎるガチャ、パッと見からは予想できないほど複雑な戦闘、キチガイじみた難度が逆に意欲をそそる育成など、他のソシャゲの影響を受けまくっている部分も多いが、うまい具合にブラッシュアップされている箇所も多くマイナス要素にはなっていないと思う。シナリオや世界設定にも細やかな気配りとリスペクトが効いています。『将太の寿司2』で例えればダビッド・デュカスくらい「思ったよりちゃんと考えてた」感がある。

 

7.デモンエクスマキナ

(マーベラス/Switch)

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 高速3Dロボットアクションだが、おれみたいに反射神経が終わっている人間でもカスタマイズと反復でなんとかクリアできる程度の難易度。「こういうのを遊びたかったんだよ!」という欲求にすべて答えてくれた。『将太の寿司』で例えれば一見無骨ながらもスピード・テクニックに長けた叶崎精二郎のような、全能力がバランスよく高いタイプ。

 

8.Cuphead

(StudioMDHR/Nintendo Switch)

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 最高のアニメーションと最狂の難易度。いまだコンプリートは成し遂げていないがクリア時の達成感はすごかった。これだけ自分をほめてやりたいと思ったのは『ロックマン&フォルテ』(SFC)クリア時以来かも。『将太の寿司』で例えればいきなり決勝に出てきた高田早苗くらいの隠れた強豪。

 

9.ドラゴンクエストビルダーズ2 破壊神シドーとからっぽの島

(スクウェア・エニックス/PS4)

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 ドラクエブランドの持つ「上手なパクリ技術」のお手本のような1本。PS4で初めてトロコンできたという意味でも想い出深い。シナリオもなかなか挑戦的で、今後シドーのことを見る目が変わってしまいそう。『将太の寿司』で例えれば普通に百目の辰さんくらいの確かな実力と素材の選定眼があります。

 

10.Fit Boxing

(ユービーアイソフト/Switch)

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 声優の掛け声にあわせてパンチを打つだけの内容だが、この手のフィットネスゲームの中でも爽快感はかなりのもの。なんだかんだで長続きしている。というか「本作のプレイ時間をどうやって捻出するか」がいちばんの課題で、生活習慣の改善にも役立っているようないないような現状です。『将太の寿司』で例えればエビにスキルを振り過ぎた下山鉄雄みたいな一点突破型。

 

 以上です。ついでなので今年遊んだ中で「ガッカリしたゲーム」も選んでみようかと思います。あまりゲームに詳しくない人のため、各ゲームタイトルを『将太の寿司』の登場人物に例えてわかりやすくしてみます。

 

1.ANTHEM

(エレクトロニック・アーツ/PS4)

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 クリアまではわりと無難に遊べるのだが、クリア後のコンテンツが激薄。「マルチで挑戦したくなるような高難度・高報酬のミッションが実質1つしかない」、「ハック&スラッシュなのに手に入るアイテムがいくらなんでもクソ過ぎ」という状況が長い間続き、どんどん人が離れていったあげく、初期開発スタッフも抜けてこれ以上の改善が望めなくなったというニュースが広まりトドメを刺された。今はアマゾンで新品が500円で購入可能。定価購入組血涙。『将太の寿司』で例えれば性格のゴミさで笹寿司を凌駕する高山信一郎くらいの残念ぶり。

2.TRAVIS STRIKES AGAIN: NO MORE HEROES

(マーベラス/Switch)

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 パロディ満載の『ノーモアヒーローズ』シリーズでは、レトロゲームの持つ不自由さやチープさをあえて取り入れることでゲーム性を深めたり、ギャグに昇華したりしていたのだが、本作では単にチープなだけになっているため「思ってたのと違う」感が強い。雰囲気は抜群なのだが…。『将太の寿司』で例えれば笹寿司四包丁の最後の女みたいな裏切られ方。

 

3.ボーダーランズ3

(テイクツー・インタラクティブ・ジャパン/PS4)

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 グラフィックは順当に進化、キャラビルドもパワーアップ、世界観・キャラクターも前作までを引き継いだ正統派続編! …のはずなのに、なんだろうこの「夢中になれない感じ」は。おれが飽きただけなのか、本作自体に問題があるのかまったくわからん。これも数年寝かせておいていいのかもしれない。というか、『2』はなんであんなに面白かったんだろう? 『将太の寿司』で例えれば月岡アキラみたいな「要素は揃っているんだけど…」なタイプ。

 

 以上です。個人的に好きなキャラは『将太の寿司2』の佐治将太です。

 

【旅行】大洗、あん肝うま過ぎてずるい

 あんこう目当てで大洗に行ってきたんですが、今までの人生で食べた最うまランキングベスト5くらいに余裕で食い込んできたうえにガルパン三昧で満足という話をします。

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 先にあんこうの話をしますと、今回は「ご馳走 青柳」という住宅街のド真ん中にあるお店へ伺いました。一般的な家屋を改装したと思しき内装で、事前に情報を仕入れておかないと割烹だとは気づけなさそう。

 

 最初に出てきたのが「あんこう供酢」。あんこうの身、皮、肝、胃、卵巣、えら、ひれといったいわゆる“七つ道具”を、肝を練り合わせた酢味噌でいただくという郷土料理。

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 要は七つ道具お試しセットであり、「はえ~、ヒレとかも普通に食えるんンゴねえ」と感心するし、それぞれの食感の違いもなかなか楽しめる。うまい。間違いなくうまいのだが、まあここまでは想定内のうまさである。

 

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 あん肝。はい。どうなってんの? 何コレ。やばいよ? あん肝なんて今までもそこそこ食べてきましたよ。居酒屋ではそれなりのお値段と引き換えにわりとハズレのない満足感をもたらしてくれる定番ですし。でもコレは何? 今までのあん肝はなんだったの? ひとかけら口に運ぶと同時に“なめらかさ”が怒涛の勢いで口内を満たすというか、濃厚という言葉を具現化した存在というか…。旨味と脂肪を極限まで詰め込んだブツを頂いてしまう背徳感。「あさつきにもみじおろしとは、こりゃまたベタな薬味を使っておられるのですな(笑)」といった先入観も、あん肝の味の暴力の前では軽く吹っ飛ぶ。ささやかな量のもみじおろし、しゃきしゃき感あふれるワカメ、そこそこたっぷりのあさつきは、あん肝の風味に塗りつぶされないギリギリの節度を保ちつつも最大限に味を引き立ててくれる。どうなってんの。もう。マジな話、なんでこんなにいつも食べてるあん肝と違うの? 反則ですよ。食べると無くなるのが唯一の欠点。

 

 そしてメインの「どぶ汁」を目の前で作っていただいた。

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 どぶ汁というのは“水をいっさい使わない鍋”でありまして、野菜とあんこう自身から出る水分だけで調理するというから驚き。元は船上で漁師が採りたてのあんこうをアレする手段だったと聞きます。火加減を絶妙に調節しつつ、パッパッと調理する料理人の手際に見惚れる。かっこいい。

 

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 できまんた。

 

 なんかもう、身がたっぷり過ぎて…。これをガッッッと平らげた後の雑炊も「もうお腹いっぱいで食べらんな~い><」とか思ってたのに速攻で胃に収まるし。勘弁してくれという感じでしたね。ウィキペディアの「酒池肉林」の項目に参考写真として載せたい。そういう体験でした。

 

 しかしまあ、どぶ汁にももちろん感動したけど、あん肝のうまみインパクトは凄かったよな…。あん肝と言えば『美味しんぼ』1巻の第2話で「フォアグラなんかよりももっと美味いモンを食わせてやりますよ!」と啖呵を切った士郎が追い求めたくらいの食材である。漁船で極上のあん肝をゲットした士郎はそのうまさのあまり座り小便して馬鹿になってしまい、「アンキモアンキモアンキモ」と呪文を唱えたのち強烈な厭世観に囚われ死んだという(その後の111巻に渡る物語はすべて走馬灯)。あん肝。グルメ界レベルの魔性珍味である。

 


 

 あん肝の話は終えたので、大洗旅行について改めて。以前、男連中と遊びに行ったときは『ガルパン』未見だったのであんまりピンと来なかったんですが、今は漫画とかスピンオフはともかく映像作品はほぼ観ているのでいろいろバッチリです。
 新宿から特急で水戸へ、そこから鹿島臨海鉄道に乗り換えて3時間くらいで到着。

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 大洗駅前、はっきり言って「なんにも無い」んだが道路はきれい。戦車で踏み荒らした後を舗装し直したんだね。大洗マリンタワーまで徒歩で10分くらい。とりあえず『ドラクエウォーク』のご当地アイテム「あんこう」を入手したりした。

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 言い忘れていたがこの旅行はもう1か月前の話で、この日は「大洗秋祭り商工感謝祭」の日でした。出店だの舞台だので賑わっていたが、今年の人出はおとなしかったのか、司会の芸人が「声優さんが来ないとこんなもんですよね!」などと言っていた。
 祭りの日なのでマリンタワーの展望台は無料。せっかくなんで昼食はガルパンカフェで食べました。大洗カジキドック1000円。

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 これがまたあなた、メニューの写真の1.5倍くらいのビックリボリュームで、いい意味で裏切られた。ジャンクな味わいながらも後を引くうまさ。揚げ物とソースのガッツリ感のおかげで祭りの屋台メニューを試そうという気が起きなかったので痛しかゆしと言うか。サービス精神はすごい。

 

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 宿も『ガルパン』のためにグッズ展覧室をわざわざ設けていました。わりとどこの宿も、ナチュラルにこんな感じだと思われます。朝食時も、客のごく普通の家族連れ(三世代)がガルパン最終章の話をしているくらいだったし。「とびた荘」は大洗ではわりと数少ない温泉宿で良かったです。

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 1日目は宿に着いたら、あとは「ご馳走 青柳」に行くくらいしか予定を組んでいなかったので、大洗との関連がいまいち見えない「めんたいパーク」 に足を運ぶなどもしていた。あ、ちなみに移動はほぼ徒歩と周遊バスで行いました。自転車借りてもよかったかもしれない。

 

 翌日は大洗磯前神社に行ったり、

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  マリンパークでひっくり返るマンボウを見たり、

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 ガルパン看板を眺めつつ商店街を雰囲気でフラフラ歩いているとあっという間に時間が過ぎまんた。

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 商店街、「味の店 たかはし」の“みつだんご”がハチャメチャにうまかったのでここは本当に寄ってほしいです。写真撮り忘れたけど華ちゃんが目印。普通のだんごとは違って小麦粉で作られているんだけど、これがまたなんでこんなにうまいのか。団子なのにふうわり(将太構文)柔らかくてあっさりしており、濃厚な蜜と完璧にマッチしている。マジうめえ。週1くらいで食べたい。ローソンのマチカフェとかで展開してほしい。

 ちなみに大洗土産が欲しいなら、マリンタワー近くの大洗シーサイドステーションに行くのがいちばん無難だと思いまんた。ガルパンギャラリーもあるし。

 

 そんなこんなで人生2回目の大洗でしたが、シンプルに最高としか言えない場所だったので最終章が完結するかしないかくらいを見計らってもう1度行きたいですね。

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 あと桃ちゃんの関連商品がうめドリンクくらいしか見つからなかったのでもっと展開してほしいですね。

 

【レビュー】『モンスターズ 現代アメリカ傑作短編集』B・J・ホラーズ編

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 「モンスター」をテーマにした、海外で編まれたオリジナルアンソロジーの翻訳。帯裏に書かれた訳者あとがきには「受賞歴なし、無名の編纂者、小さな出版元、そして収録作家の半数以上が無名という、いわば『ないないづくし』の本である」とある。実際、執筆者一覧を見てもほとんど見覚えのない名前ばかりで、ネビュラ賞受賞者のケリー・リンクくらいしかわからなかった。

 表紙イラストや帯表の「怖いのに、なつかしい。」との文で察せられる通り、本書はバケモンどもが首や手足をポンポン引っこ抜いたりするような内容では無いので、そっち方面を期待してはいけない。吸血鬼、フランケンシュタインの怪物、ゾンビ、モスマンといった怪物たちも登場するが、大半は「人間」というモンスターを描いたものだ。とは言え「モンスターより怖いのは人間!」といった説教臭さは無く、身近な隣人として、友人・家族としてのモンスターを描こうといった意図が見て取れる。

 

■クリーチャー・フィーチャー(ジョン・マクナリー) ★★★
 ティミーはモンスター映画の大ファン。世の中をなんでもホラー映画チックに見てしまう彼に妹が産まれることになった。新しい命の誕生、淡い恋心を知り、少年は少し大人になる。本書のあらすじには「モンスター映画が大好きな少年の爆笑の日々を描く」などと書かれているが、大爆笑というよりは古き良き時代を描いたユーモア小説といった体裁。

■B・ホラー(ウェンデル・メイヨー) ★★★
 「怪物と襲われる美女」のコンビでパーティに出張する。B・ホラー・エンタープライズの2人組。その甲高い悲鳴を買われて美女役を任される「ぼく」と、雇い主のおっさん「B」の物語。本アンソロジーには怪物を着ぐるみで演じる話が3作もあるのでちょい埋もれ気味だが、細やかな心理描写が読ませる。

■ゴリラ・ガール(ボニー・ジョー・キャンベル) ★★★★★
 さて、ようやく“モンスター”が登場してくれた。常に怒りと破壊の感情を秘めたゴリラ・ガールの半生記。子供のころから男を殴り、テントウムシを食べ、親に噛みつき、自分にも噛みつくゴリラ的な凶暴さを秘めた少女。成長するにしたがい美しく、強く(性欲も)なった彼女が最終的に行きついた場所は? 筆致もパワフルでエネルギッシュな快作。

■いちばん大切な美徳(ケヴィン・ウィルソン) ★★★★
 自ら吸血鬼になることを選んだ娘に対する両親の心情が描かれる。心締め付けられる短篇。

■彼女が東京を救う(ブライアン・ボールディ) ★★
 戦うたびに親密になっていった、ゴジラ(女性)とキング・コング(男性)が別れ話をするというショートコント。なんなんだこれは。

■わたしたちのなかに (エイミー・ベンダー) ★★★★
 ゾンビにまつわるショートエピソード7編の連作。超自然とは関係ない最後の実話エピソードが実にやるせない話で、これが書きたかっただけちゃうんかという気もする。

■受け継がれたもの(ジェディディア・ベリー) ★★★★
 グレッグの家の地下室には、見たこともない「獣」が鎖でつながれていた。死んだ父親の形見でもある獣は意外に賢く、人にも懐いていたのだが…。エピソード自体は「飼い犬」でも同じ展開になりそうだが、得体のしれない獣の存在感が不安を煽る。

■瓶詰め仔猫(オースティン・バン) ★★★
 交通事故で顔に大怪我を負い「怪物」と化した少年。事故を起こした相手はすでに死んでいたが、少年はその妹を対象に行動を起こす。人はどこから怪物になるのか、それは誰のせいなのだろうかという重い問いかけ。

■モンスター(ケリー・リンク) ★★★★★
 キャンプにやってきた子供たちの間でささやかれる、モンスターの噂。大きな黒い翼で空を飛び、鋭い牙が生え、人に噛みつくという。キャンプに乗り気でないジェームズにとっては、
 モンスターよりもいじめっ子たちの方が大きな問題だった。そいつが本当に来るまでは…。悪ガキどものわくわく冒険アドベンチャーが、鮮血のラストシーンを迎える。

■泥人間(ベンジャミン・パーシー) ★★★
 几帳面な男、トーマスが庭仕事中にケガをして落とした爪から、泥人間(マッドマン)が生まれる。見た目に似合わず働き者の泥人間は、トーマスの妻や息子にも受け入れられ、家族の一員のように迎え入れられるのだが…。わかりやすくも皮肉なオチが決まっている1本。

■ダニエル(アリッサ・ナッティング) ★★★
 自分のことを吸血鬼だと思い込んでいる少年・ダニエル。牙をとがらせ、コウモリを飼いたがり、犬の血を吸い、鳥の生首にかぶりつき…と、奇行はどんどんエスカレートする。そんな彼を疎んじる母と、関心を持たない父。「いちばん大切な美徳」と同じく吸血鬼とその家族の物語だが、こちらで描かれる家族像は歪な形を取っている。

■ゾンビ日記(ジェイク・スウェアリンジェン) ★★★
 ゾンビ・アポカリプスに巻き込まれた派遣社員の手記。わずか6ページにゾンビ映画の典型的、かつ一捻り加えた展開が詰め込まれており意外な読み応え。

■フランケンシュタイン、ミイラに会う(マイク・シズニージュウスキー) ★★★

 古代エジプト研究者の彼女と、ヒモ同然の暮らしをしている主人公。彼女が勤める博物館の博士から「子供たちのレクリエーションのためにフランケンシュタインの怪物に扮装してくれ」と頼まれるのだが…。とことんダメ男な主人公が成長するちょっといい話…かと思いきや、ラストの破滅的なドタバタ。呆気にとられる怪作。

■森の中の女の子たち(ケイト・バーンハイマー) ★★
「ヘンゼルとグレーテル」を下敷きにした現代寓話。これはやはり絵本で読みたいお話かもしれない。

■わたしたちがいるべき場所(ローラ・ヴァーデンバーグ) ★★
 女優志望だがなかなか芽が出ず、ビッグフットの着ぐるみを来て客を驚かす「ビックフット・レクリエーション公園」でバイト中の主人公と、難病をかかえた恋人との切ない恋。美しい文章だとは思うが、ビッグフットの設定をうまく扱いきれておらず、別にモンスター関係ないじゃんという気がしないでもない。

■モスマン(ジェレミー・ティンダー) ★★★★
 本アンソロジー唯一のコミックで、短いながらも鮮烈なラスト1コマが印象的。。音楽好きのクリーチャー、モスマンがラジオを手に入れた。彼が愛したのハード・ロックは、いつしかラジオから流れなくなった…。

 

 以上、いずれもノスタルジックで精緻な心情描写が印象的な17編。アンソロジーにありがちな「作風がバラバラ過ぎて1作読み終えるのに時間がかかる」みたいなこともなく、すらすらと読める。ただ、個人的にはやはり暴力と血の臭いにまみれた「モンスター」「ゴリラ・ガール」の2編が飛びぬけて好み。ブラッドベリ的な郷愁のみに留まっておらず、「これがバケモンじゃい!」という気概が感じられる。「フランケンシュタイン、ミイラに会う」のデタラメなラスト、「泥人間」の奇妙な侵略者ぶりもなかなか忘れがたい。