ジャッカルの日

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【映画】『ミッドサマー』と家族オナを観た

 映画『ミッドサマー』、マジで最悪の147分間でした。不穏な緊張感がず~~~っと続いて気の休まる時がほとんど無く、なんでカネ払って厭な気分にならなければならないのかと。最高に最低の映画体験。もう虜。
 監督は「ボクはこれをホラー映画とは思ってないよ! ぜひカップルで観てね」などと満面の笑顔でサイコパス学校の校長みたいなコメントを残していたが、枠組みは言ってしまえば典型的な「田舎ホラー」のソレである。文明と切り離された独自のコミュニティに余所者が紛れ込み、奇祭に目の当たりにし、タブーを犯し、1人ずつ排除されていくという朝起きたら夜に寝るレベルのお約束だが、舞台となる白夜のホルガ村の抜けるような青空と色とりどりの花々、ファンタジーのような住民たちが異様な雰囲気を醸し出す。
 映像とサウンドは「小手先」のしゃらくさいテクがあちこちに最大限使われており、これがまた最大限効果的にこちらのMPを削って来るので腹立たしい。オープニング各所の場面転換、鳴り止まない不協和音、泣き止まない赤ん坊、かすかに聞こえる悲鳴と絶叫(劇中の村人たちがまったく反応しないせいで、観ている方も空耳だったのかなと不安になってくる)、ドラッグのせいで歪む視点などなど…。凝ったつくりのパンフレットには「知ってないと気付かないよ!」みたいなネタバレ、小ネタがいろいろと書かれて確認のためもういちど観てみたいのだが、観たくない。観たいけど今じゃない。この人の映画見ると頭の中がサウナと水風呂の交互浴みたいな状況になるので、ぶっ続けで3回くらい観ればメンタルがととのうかもしれないが。

 

 

 パンフでも言及されていたアリ・アスター監督の初期作「The Strange Things About The Johnson's」をYouTubeで観た。息子のオナニー現場を見てしまった父親、「みんな誰でもやってることだから! 気にすんなよ! ゴメンね!」と優しく諭すのだが、息子がオカズにしていてのは当の父親本人だった。そして始まる息子から父親への性的虐待の日々…という、もうこれ家族の崩壊とかいうレベルじゃねえなという短編。翻訳はされていないが、英検3級のおれでも雰囲気はなんとなくつかめる。

 


 あと「この作品を観た人々の反応まとめ」が普通に良いです。ナイスリアクション。

 監督の映画はどれも「家族」を描いたもので、その歪みッぷりがハンパないみたいに言われいたりもするが、この監督、家族を歪んで見ているのではなく、普通の人なら目をつぶる歪みが見えてしまうタイプなんだろうなと思う。家族と言えども他人。夫婦だったらなおさらだ。ホラー映画は「最悪」を描くことで我々の人生に後ろ向きな慰めと活気を与えてくれるが、ある意味最良の家族関係を描くと同時に最悪の男女関係を描いた『ミッドサマー』は確かにカップル向きの映画なのだろう。

 

 『ヘレディタリー/継承』『ミッドサマー』と続けて観ると監督の作風がはっきりわかってきて面白い。家族についてもそうだし、ラストでの全員集合とか…。個人的に『ミッドサマー』は高く評価するが、わけのわからない不穏さで圧倒している『ヘレディタリー』のほうが好みではある。次回作はどうなるんだろうなあ。「また同じことやるのかよ~でもやっぱし最高!」になるのか、「こういう引き出しもあったんだ!」と驚かせてくれるのか…。