ジャッカルの日

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【特集】『ニンジャスレイヤー』第4部未読者に推したい10忍

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 『ニンジャスレイヤー』第4部「エイジ・オブ・マッポーカリプス」はnote連載のエピソードも多く、ツイッターと比べるとリアルタイム更新で盛り上がるのがちょい難しかったりもする。とは言え、各エピソードの切れ味は第3部以前と比べても引けを取らないどころかスケールアップしているし、作品としても円熟味を増している。特に登場するニンジャの多様性は第3部以上だ。

 今回は「第4部どっから読めばいいかわからん」という人のために、個人的に好きな第4部のニンジャを10人をつらつらと挙げていく。note連載に登場するニンジャが多くなってしまったが、Twitter連載に比べてトンガったエピソードが多いのも関係しているかもしれない。

 

■アイアンアトラス

出演/「アイアン・アトラス」
所属/フリーランス

◆忍◆ ニンジャ名鑑#0101 【アイアンアトラス】 ◆殺◆

ネオサイタマに生きる粗暴なニンジャ。パチンコや競馬などの賭け事やガールズバーが好きで、力が強く、辛抱しない。

  ネオサイタマで自由気ままに生きるガキ大将ニンジャである。
 大柄で怪力、細かいことは気にしない脳筋パーソナリティの持ち主。まんまジャイアンとかガッツマン。あるいはキン肉マンビッグボディを頭悪くしたような感じ(さらに!?)。陰謀渦巻くネオサイタマで、特にどこの組織にも所属することなく、好き勝手に飲み歩いたり、パチンコに興じたり、ガールズバーに通ったり、カツアゲを返り討ちにして逆にカツアゲしたりしている。とは言えただのロクデナシではなく、義には篤いしイクサも相当強い。
 note限定「アイアン・アトラス」シリーズに登場しており、このシリーズは「無知能短編」と翻訳チームが称するほどのアレである。平凡なメガネ大学生のコミタ・アクモがネオサイタマでボッタクリにあったり、飲み過ぎてゲロ吐いたり、チンピラに拉致されたりと散々な目に会うも、ひょんなことで知り合ったアイアンアトラスが助けてくれてよかったネという「ドラえもんヤンマガ編」のような雰囲気に終始包まれている。忍殺の魅力の1つであるトンチキさを突き詰めた短編であり、この調子で52話くらい読みたいですね。


■アンブラ

出演/「ビフォア・ザ・ストーム・ゴーズ・アウェイ」
所属/フリーランス(ハデスニンジャ・クラン)

◆忍◆ ニンジャ名鑑#(未掲載)【アンブラ】 ◆殺◆


 シリーズ初のコギャルニンジャである(今後もたぶん出てこないであろうと思われる)。茶髪にサングラス、ジャージ姿で武器は木製バットと、コギャルというよりはヤンキーに近い。あまり勉強ができるようには見えない。

「つまりさ、マスターは……」
「ウチらハデスニンジャ・クランをシメてる大ボスって事ッしょ?」

「ああ……数千年前ね。恐竜とかいた時代だよね、確か」アンブラは頷いた。

 恐竜は数千年前にいたと思っている。

 影を操るジツを持つ「ハデスニンジャ・クラン」のソウルを宿しており、力が暴走しかけたところを同クランの元締め、シャドウウィーヴに救われる。シャドウウィーヴはかつてその中二病っぷりとティーンらしい繊細さが人気のニンジャだったが、第3部を経て大きく成長。今ではアンブラのマスターとして、彼女と共にクランの仲間を集めているようだ。「ちょっと陰のある師匠」と「今後の伸びしろが期待される新人(コギャル)」…これは層に届く。


■インシネレイト

出演/「ライフ・アフター・デス」
所属/ソウカイヤ(シックスゲイツの6人)

◆忍◆ ニンジャ名鑑#0044 【インシネレイト】 ◆殺◆

ソウカイ・シックスゲイツのニンジャ。カトン・ジツを操る。スクエアフレームの眼鏡をかけ、三つ揃えのスーツで爪先まで美意識を行き届かせている。そのインテリジェント・ヤクザ然とした外見に反し、極めて好戦的な男として知られる。

  インテリじみた外見に戦闘狂の内面を持つ狂犬ニンジャである。
 メガネにスーツ、オールバックでキメた伊達男。外見に反して凶暴かつ粗暴極まりなく、すべてを焼き尽くすカトン・ジツの使い手。
 ソウカイヤの精鋭「シックスゲイツ」に名を連ねるだけあって、玉石混交のカトン使いの中でもかなりの実力者。同じくシックスゲイツのガーラントやヴァニティのことを「オニイサン」「姉御」と呼んでいたり、強敵相手にはわりとボコボコにされていたり、(おそらく)最若メンバーのためか舎弟っぽさが抜け切れていない。本編登場前に更新されたニンジャ名鑑ではその外見が強調されていたため、ここまでチンピラだとは思いもよりませんでした。

 ちなみにメガネをかけているニンジャは少なく、劇中でも3~4人くらいしかいない。基本的にニンジャにメガネは必要ない(ニンジャになった時点で肉体の不調はよほどのことが無い限り回復する)ためで、わざわざメガネをかけているのは何らかの特殊機能が付いているか、単にオシャレのためである。こいつの場合は後者と思われるが、彼がそうしたパーソナリティを持つに至った経緯はわりと気になるところである。


■エヴァポレイター

出演/「フォ・フーム・ザ・ベル・トールズ」
所属/フリーランス?

◆忍◆ ニンジャ名鑑#0133 【エヴァポレイター】 ◆殺◆

女子高生収容所の見張り塔にいるニンジャ。ジツにより目からレーザーを発射し、脱走女子高生を容赦なく原子分解する。強力だがレーザーは連射が効かず、また予備動作としてある程度の長さのニンジャサインが必要になるので、そこを狙うとよい。

 ビームで女子高生を焼き払う女子高生収容所の主である。

 第4部の短編の中でも群を抜いたトンチキさでタイムラインを騒がせた「フォ・フーム・ザ・ベル・トールズ」の敵役で、「女子高生収容所」なる施設の警備を任されている。女子高生収容所とは、その名の通りセーラー服の女子高生が終わりなき労働に従事している暗黒非合法施設。その目的は「女子高生たちの女子高生性を無為に消費させること」であり、全国から拉致されてきた女子高生たちが、深い穴を掘って埋めたり、オリガミを折らせてそれを焼いたり等の無駄な労働を強いられているという。闇カネモチの道楽にしては度を越し過ぎだろ! まだ売春組織とか殺し合いのバトルロイヤルをさせるとかのほうが理解できるよ!
 そんな女子高生収容所で、エヴァポレイターは脱走する女子高生を目から放つレーザーで原子分解させる役目を与えられている。サイバネではなくジツの一種と思われるが、当然ながら「一撃死のレーザーを放つ」なんてのは規格外の強さである。ニンジャのイクサでは最初の1回だけアンブッシュ(不意討ち。アイサツ前の攻撃)が許されているが、光速、長距離、即死のレーザー光線によるアンブッシュを回避するなど、よほどのインチキ能力を持っていないと不可能だ。要人暗殺はもちろん、イクサでの後方支援としてもこれ以上はないほどに強力なジツと言える。
 で、こうも凄まじいジツを持つ彼が、なぜよりによって女子高生収容所で女子高生を相手にしているのかは謎である。よっぽど待遇がよかったのか…。あるいは女子高生にしか効かないビームだったのか。

 

■サキュバス

出演/「ポッシブル・ドミネイション」
所属/過冬(ワイズマン)

◆忍◆ ニンジャ名鑑#0087 【サキュバス】 ◆殺◆

過冬「ワイズマン」の一人。ハッカーニンジャであり、カラテ鍛錬も相当のもの。邪悪コード収集家。性別は男だが電子コトダマ空間においては旧時代の性的嗜好ライブラリを参照、男女問わず性的エクスプロイットな外見を取り、ハッキングの優位を得る。

 ネカマに特化したイケメンである。

 第四部第二シーズンの敵組織「過冬」の幹部・ワイズマンの1人にて強大な力を持つハッカーニンジャ。コトダマ空間(要は電脳ネットワーク上の概念世界)では、ハッキング対象の性的興味を刺激する姿に変身。伝説のウイルス「スケベ・ドミネイター」を相手に植え付け、スケベのことしか考えられなくなっている隙に情報を盗み出す。

 この字面の暴力としか言えないツイートは伝説級。
 ハッカー専門ではあるがカラテも相当に強く、ニンジャスレイヤーとの生身のイクサでも引けを取らなかった。ちなみに実在の姿は精悍な顔立ちの男性であり、「強いネカマ」としてヘッズの記憶に刻み込まれることになった。


■サブジュゲイター

出演/「エグゼクティブ・スプレンダー」
所属/ヨロシサン・インターナショナル

◆忍◆ ニンジャ名鑑#0105 【サブジュゲイター】 ◆殺◆

バイオケミカル暗黒メガコーポ、ヨロシサン・インターナショナルの力強きCEO、ヨロシ・サトルはニンジャである。ヨロシ遺伝子所持者のニューロンに干渉するヨロシ・ジツは近接距離下で絶対の支配力を持ち、バイオニンジャは彼に歯が立たない。

  暗黒企業をホワイトに生まれ変わらせた、かつての悪役である。
 第3部では暗黒メガコーポ・ヨロシサン製薬のバイオニンジャとして登場。いずれ自分がCEOにならんとする野望を秘めた、鼻持ちならないエリート意識と上昇志向を持つイヤな奴であった。ヨロシサンの上部にはその野心を見ぬかれた上でいいように扱われており、ブッダの手のひらで泳がされる哀れな男という印象も強かった。
 そんなサブちゃんだが、第4部では見事ヨロシサン・インターナショナルのCEOにまで登り詰めている。カイシャを経営しているニンジャの多くが理不尽な暴虐を社員や顧客に強いているのに対し、ヨロシサン・インターナショナルは超ホワイト企業! …というわけでもなかろうが、少なくともモータル・ニンジャ問わず部下はしっかり労わったうえで評価するし、地元住民と問題が起きれば菓子折りやドゲザ・パラシュート部隊で詫びを入れるし、暗黒メガコーポとは言え搾取するだけの邪悪な企業ではない。むろん、CEOを狙う不届き者がいれば自ら返り討ちにする。第4部で多くのニンジャが成長を遂げた中、彼がここまで株を上げるとは誰が予想しただろうか。同じく社長として奮闘している今のサワタリと対峙してもらいたいものだ。

 

■タランテラ

出演/「アイアン・アトラス・ブラックアウト!」
所属/ツチグモ・ギャング

◆忍◆ ニンジャ名鑑#0102 【タランテラ】 ◆殺◆

ネオサイタマのフーディーギャング「ツチグモ・ギャング」の頭目のニンジャ。カタナを常に持ち歩き、殺人を容赦しない危険なニンジャ。

 耐久力以外に見るべき点がないチンピラである。

 チンピラ集団「ツチグモ・ギャング」のリーダー。黒いフード装束、メンポやアジトの装飾にあしらったクモの意匠、「~だヨ」「~でショ」など語尾がカタカナになる喋り方、タランチュラではなくわざわざ「タランテラ」を名乗るセンスなど、厨二っぽさが隠しきれていない。
 彼の魅力は恐ろし気な外見や言動に反してメチャクチャに弱いところにある。アイアンアトラスのライバル的な立場になるかと思われたが実力は雲泥の差で、2回対峙して2回とも何もできず一撃で倒された。また、敵対ギャングのニンジャ・テラートリガーには手も足も出ないまま2発でKOされてしまっている。対ニンジャのイクサで何もできないまま3連敗しているのはこの人くらいなもんである(普通1回負けた時点で爆発四散するため)。

 タランテラが考えるところの「残忍な所業」もその辺の一般人とたいして変わらなかったりするため、ヘッズからは「自分をニンジャと思い込んでいるただのチンピラなのでは?」とかわいそうな人扱いされていた。今後もポンコツライバルとして活躍してほしい。

 

■ツインテイルズ

出演/「クルセイド・ワラキア」
所属/フリーランス

◆忍◆ ニンジャ名鑑#0119 【ツインテイルズ】 ◆殺◆

フエの演奏で路銀を稼いでいた路上生活パンクス女に、ネコニンジャ・クランのソウルが憑依。しぶとく生き残り、現在はオー・オーと旅をしている。レッサー・ゼゲン・ジツを使う他、ネコと会話して操ることも。重度のハッパ愛好者で匂いがすごい。

 冗談みたいに属性過多のネコネコニンジャである。

 note限定公開の長編「クルセイド・ワラキア」に登場するパンクス女ニンジャ。重サイバネながらショタ属性の相棒、オー・オーと手を組み、吸血鬼ブラド・ニンジャの支配下にあるネオワラキアへとやって来たあげく、いろいろ大変な目に会う不憫キャラ。
 相手を魅惑するゼゲン・ジツの使い手であり、フエで猫を操る力を持つ。猫又を意識したと思われるデザイン、ハッパ中毒、語尾に「ニャー」を付けるスゴイ・アザトイ喋り方、体臭がキツい(獣臭)等、その属性は過多の一言。現時点でかなりのウキヨエ(ファンアート)が描かれている人気者。ファンアートのアーカイブ、ネオウキヨエ空間でも多様なツインテイルズが見られるよ。

 髪型はツインテール派が半分くらいと思われます。
 ちなみに第3部の時系列ですでにニンジャであり、猫爆弾で市役所の爆破を企んでいたがニンジャスレイヤーに阻止された模様。4部が3部から約10年後なので、「クルセイド・ワラキア」時点ではどう若く見積もっても20代後半と思われるが、それで「ニャー」とか言ってるのもカワイイだ。


■ベンガルタイガー

出演/「ドラゴン・ドージョー・リライズ:奮闘編」
所属/フリーランス

◆忍◆ ニンジャ名鑑#0084 【ベンガルタイガー】 ◆殺◆

キョート出身の粗暴なるニンジャ格闘家。カラテ群雄割拠時代となった月破砕後の世界で、ニンジャとのカラテ戦闘に勝ち続け、力をつけていく中で、己の力を過信するようになっていった。

 一見、粗暴ながらお人よしの面も見え隠れするカラテ求道者である。
 ユカノことドラゴン・ニンジャは、かつてからの悲願であった自らのドージョーを岡山県に復興する。地道な活動のおかげで住民からの支持も得られるようになり、入門者も少しずつ増え、ドラゴンニンジャ・クランの後進育成も順調かと思われた。が、善意のスポンサーが付いたことで「健康志向」推しや「通信カラテ」、派手なコマーシャル展開など、ドージョーの経営はいつしかおかしな方向に。かつて道場破りを挑むもユカノに敗北したベンガルタイガーはこの状況に激昂し、サツバツナイトことかつてのニンジャスレイヤー、フジキド=ケンジをセコンドにつけてユカノに再度カラテ勝負を挑む。
 リアルニンジャと打ち合えるだけあって、ベンガルタイガーは相当に強い。最初の登場ではいかにもな悪役だったが、殺しあいではなく試合形式に則ったカラテ道を追求しているようで、いわゆる「粗にして野だが卑ではない」タイプ。道場門下生とのカラテ勝負でも致命傷は与えないよう手加減していたり、ユカノのSNSにわざわざ動画コメントで挑戦状を叩きつけたり、女の子を泣かせてしまい意気消沈したりと、根は邪悪ではないことが伺える。フジキドに直接指導を受けた数少ないニンジャでもあり、再登場の際にはさらなる成長を遂げているであろう。

 

■ロングゲイト

出演/「ヨグヤカルタ・ナイトレイド」
所属/コウ・タイ・シュメイ社、サンズ・オブ・ケオス

◆忍◆ ニンジャ名鑑#0013 【ロングゲイト】 ◆殺◆

コウ・タイ・シュメイ社のエージェントとして世界を飛び回るニンジャ。カゼニンジャ・クランのソウル憑依者であり、ソニック・カラテの鍛錬を積んでいるほか、サツガイから短距離テレポート能力「マバタキ・ジツ」を与えられている。

 営業力、交渉力にニンジャスキルをつぎ込んだ邪悪サラリマンである。

 国際企業コウ・タイ・シュメイ社のエージェント。相手を接待すること自体が好きなようで、浮浪者にはお金を施し、貧しい子供達にはフルーツを与える。その気前の良さから「あれ? この人ニンジャとしてはかなり控えめで邪悪でないほうでは?」と思いかけてしまうが、取引先のニンジャには生娘20匹を渡している。相手が喜ぶものならなんでも与えてしまうのである。この「コミュニケーション能力は抜群なのに、他者への共感性が薄い」点がいかにもニンジャ的でゾクゾクする。

 彼は第4部第1シーズンの主要的組織、サンズ・オブ・ケオス(以下SOC)の一員。SOCのニンジャの特徴として、自前のジツ・カラテに加えて「サツガイ」なる人物から与えられたもう1つのジツを使いこなす点が挙げられる。 ロングゲイトの場合、自前の「ソニック・カラテ」とサツガイから与えられた「マバタキ・ジツ」を見事なコンボで使いこなしており、どちらも過去に登場したジツであることも相まって印象深い。SOCにはモータル社会に溶け込んで生活しているニンジャも多く、そういう面でもロングゲイトはSOCを代表するニンジャと言える。

 

 以上です。推しを集めたらチンピラじみたのが6人と半分以上になってしまったが、彼らのほとんどが今も生存中で元気に大暴れしている。ニンジャの魅力は刹那的にて享楽的、死ねば爆発四散してチリも残さぬ太くて短い生きざまにあると思うが(不老なのに)、第4部ではこうしたチンピラ連中にもちゃんと“居場所”が残されているのが良いですね。あと今回は漏れましたがブルハウンド=サンには強く生きてほしいですね。

 

ダイハードテイルズ

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